2018 Fiscal Year Research-status Report
テストバッテリーを用いた,霊長類前頭極(10野)機能の解明
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18K03197
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
渡邉 慶 大阪大学, 生命機能研究科, 助教 (00772740)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平田 雅之 大阪大学, 国際医工情報センター, 寄附研究部門教授 (30372626)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 前頭葉機能マッピング / 霊長類 / 前頭極 / 高次認知機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
前頭極は,前頭連合野の最前部に位置し,最高次の認知機能を担うと考えられてきた。ヒト脳イメージング研究では、前頭極は新奇学習や二重課題実行など認知的負荷が高い場面において選択的に賦活する。しかし,生理学データに基づく前頭極機能の理解は殆ど進んでいない。今年度は、以下のテストバッテリーを用いて,サル前頭極の神経活動を多数記録・解析した。(a) 刺激受容課題(2種類)(b) 単純運動反応課題(1種類)(c) 高次認知課題(2種類)。前頭極に隣接する前頭連合野外側部(dv46野, dv8a野)の神経活動も同時に検討した。刺激受容課題と単純運動反応課題において、前頭極ニューロンは、外界の刺激(フルスクリーンフラッシュ)に殆ど応答せず、運動実行前後にもほぼ応答しなかった。dv46野, dv8a野では、前頭極から遠ざかるほど感覚刺激に応答するニューロンと運動前後に強く発火するニューロンの割合が高くなった。興味深いことに、フリーリワードに対しては、前頭極ニューロンとdv46野, dv8a野ニューロンはほぼ同じ割合(約25%)で応答した。 高次認知課題にでは、ヒト先行研究とは異なり、前頭極ニューロンは二重課題場面と新奇視覚刺激の価値学習場面の両者において課題中ほぼ全く応答しなかった。前頭極細胞が応答した唯一のイベントは、試行の成功/不成功が報酬としてフィードバックされるタイミングであった。当該試行に正答し、報酬が出た時のみ、報酬出現のタイミングをピークとする一過性の活動が多く観察された。この活動は、直前に行った行動の種類に選択的なものとそうでないものがあった。後者のnon-specificニューロンは、課題時間外のフリーリワードに対してもよく応答した。一方、後方dv46野, dv8a野では数多くのニューロンが、上記2課題の課題時間中のあらゆるイベントを網羅する形で選択的な応答を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
前頭極は,ヒトなどの真猿亜目だけが持つ脳領域であり、「前頭葉のなかの前頭葉」と形容されるように、前頭連合野の最前部に位置し、前頭連合野後部領域の情報処理をコントロールすると考えれられてきた。これまで数多くのヒト脳イメージング研究が行われてきた一方で、動物実験によるニューロンレベルの検討は数例を数えるのみであった。今年度の研究によって、性質の大きく異なる複数のタスクを用いて前頭極ニューロンの性質を検討し、前頭極が何に対して強く応答するのかについて多面的プロファイルを作成することができた。これまで、ヒト前頭葉とサル前頭葉はおおむね相同の領域であるとされ、前頭連合野外側部もヒトとサルで同じような機能分化をしていると考えられていたが、本研究の結果は、サル前頭極はヒト前頭極と異なり、前頭連合野における最高次の領域として君臨しているわけではないことを示唆している。本年度におけるデータ収集および解析は、当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究はこれまで順調に進捗しているので、次年度以降もこれまでのデータ収集と解析を引き続き行う。また、現在準備中の新たな高次認知課題における前頭極ニューロンの神経活動の記録を行う。これらのデータ収集と解析がひと段落したのち、前頭極を含む前頭連合野外側部の各領域において、局所機能脱落実験を行う。ムシモール注入によって各脳領域の活動を抑制した時に、上記の各課題においてどのような行動変容が見られるのかを検討する。これにより、前頭極が不可欠の関与をする機能が何であるのかを明らかにすることを試みる。
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