2018 Fiscal Year Research-status Report
テータ関数の特殊値の研究-代数的構造の解明とその応用-
Project/Area Number |
18K03201
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
立谷 洋平 弘前大学, 理工学研究科, 准教授 (90439539)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 整数論 / テータ関数 / ランベルト級数 / 保型形式 / 超越性 / 代数的独立性 / 従属関係式 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度に得られた研究成果は以下の通りである 1. テータ関数から派生するテータ零値(またはテータ定数)は、上半平面において定義された正則な関数であり、その特殊値の研究には多くの応用があることが知られている。平成30年度においては、モジュラー形式の理論を応用し、テータ零値の値を添加した体の超越次数に関するD.Bertrandの結果(1997)を、関連する既知の結果を包括する形で一般化することができた。本手法は、Yu.V.Nesterenkoの多項式(2006)を起点とする従来の手法とは異なるものであり、テータ零値の幅広い特殊値を扱える点で有用である。実際、本研究結果とテータ零値に関するラマヌジャンの恒等式を組み合わせることで、ランベルト級数表示をもつ新たなクラスの超越数を発見することができた。 本研究成果は、Carsten Elsner氏(ドイツ、Fachhochschule fur die Wirtschaft)、金子昌信氏(九州大学)との共同研究によるものである。
2. 本研究計画においては、テータ零値と関連が深い種々のランベルト級数についても研究対象として採り入れている。P.Erdos(1969)は、逆数が収束するような互いに素な数列に付随するランベルト級数を考察し、そのベキ級数展開の係数は十分大きいところにおいて等比級数的に振る舞うことを確かめた。この性質は、与えられた特殊値のq進展開の非周期性を導くものであり、無理性などの数論的性質に直結する。研究代表者らは、Erdosの証明を一部補完するとともに、ピゾ数などの特別な代数的整数を展開の基数にもつような数に対しても、Erdosの手法は有効であることを見出した。その結果、フィボナッチ数列やルカ数列といった二項回帰数列のある種の逆数和について、有理数体上の線形独立性を示すことに成功した。 本研究成果は、Daniel Duverney氏(フランス、Lycee Cesar Baggio)、鈴木雄太氏(名古屋大学)との共同研究によるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の着手時には、テータ零値の間に存在する具体的な従属関係式を利用して、代数的に独立な元を絞り込む手法を想定していた。この従属関係式は整数係数多項式によって表わされるが、その多項式の係数や次数は対象とするテータ零値の複雑さに比例して急激に膨張するため、扱える特殊値を制限する一つの原因となっていた。平成30年度はモジュラー形式の理論を通して、目標の一つであった代数的独立性に関する問題を解決することができた。本手法は、研究計画時において想定していなかったものであり、研究手法の面でも一定の進展があったと考えている。 また、ランベルト級数の研究においても、無理性を導くErdosの手法を再興させ、新たなクラスの数集合の線形独立性を明らかにした点は重要であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要欄で述べた通り、平成30年度においては、テータ零値の特殊値の代数的独立性について新たな知見が得られた。関連する保型形式はもちろん、既存の結果に対しても本手法の応用可能性を検討したい。また、代数的従属となる場合においては、より単純化された従属関係式を導くアルゴリズムや、線形的な関係の有無についても継続して研究を進める予定である。一方、上述したランベルト級数に関する研究においては、証明において仮定した条件の緩和が今後の研究課題である。今後も研究遂行のために関係研究者との情報交換、共同研究を積極的に推し進める。
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Causes of Carryover |
物品(数論関係の書籍)の購入額を予定より抑えることができたため。次年度は当初の計画通り、共同研究者の招聘費用、及びこれまでに得られた研究成果を発表するためにかかる出張費用として使用する予定である。
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