2019 Fiscal Year Research-status Report
テータ関数の特殊値の研究-代数的構造の解明とその応用-
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18K03201
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
立谷 洋平 弘前大学, 理工学研究科, 准教授 (90439539)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 無理性 / 線形独立性 / フィボナッチ数 / 二項回帰数列 |
Outline of Annual Research Achievements |
S.Chowla(1947)やP.Erdos(1948)は、約数関数などの数論的関数を係数とするベキ級数を考察し、その特殊値の無理性を与えた。テータ関数を含むいくつかの解析関数は、この種のベキ級数を用いて記述できるため、Chowla-Erdosの手法の発展はテータ関数値の数論的性質の解明につながる。令和元年度は本手法の発展・応用について重点的に研究を進めた。得られた研究成果は以下の通りである。
1.適当な整除性と増大条件をみたす数論的関数を係数とするベキ級数族に対し、その特殊値が有理数となるための必要条件を与えた。主定理の証明は初等的であるが、その応用として導出される線形独立性に関する結果は、研究代表者らが過去に扱った級数値を包括する形となっている。本研究成果は、Daniel Duverney氏(フランス、Lycee Cesar Baggio)との共同研究によるものである。
2.Erdos(1969)は、Chowla-Erdosの手法を基として、新たなクラスのベキ級数に対する特殊値の無理性を示した。昨年度より研究代表者らはその証明の補完・発展について研究を進めてきたが、数論的性質を抽出する過程において、対象とするベキ級数に一定の条件を付す必要があった。本年度はその条件をErdosが課した条件まで緩和することに成功し、最終的にはErdosの無理性に関する結果を線形独立性に拡張することができた。証明の鍵は、ふるい法の援用およびベキ級数の係数列が局所的に等比級数列をなす箇所を見つけ出し空隙を構成する点にある。応用として、古典的な二項回帰数列の逆数和に対する数論的性質が導かれる。本研究成果は、Daniel Duverney氏、鈴木雄太氏(名古屋大学)との共同研究によるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Chowla-Erdosの手法の発展による新たな応用例を見出し、幅広いクラスの数に対する無理性や線形独立性を明らかにすることができたため。特に、フィボナッチ数列やルカ数列を含む複数の二項回帰数列の逆数和に対し、それらの代数関係を調べる新たな手法が得られた点は有意義であった。 また、テータ零値の異なる値における代数的独立性の研究が、Carsten Elsner氏(ドイツ、Fachhochschule fur die Wirtschaft)、金子昌信氏(九州大学)との共同研究を通して大きく進展し、当初掲げた目標を達成する形で研究結果を論文として纏めることができたことも理由として挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
上述したChowla-Erdosの手法の改良・発展、および応用例の探索について継続して研究を進める。一方、テータ零値の代数的独立性を示す際に用いた研究手法については、関連する他の保型形式への適用可能性を検討し、更なる応用を目指す。 次年度も研究遂行のために関係研究者との情報交換、共同研究を積極的に推し進める予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた大きな理由は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、当初予定していた複数の出張をキャンセルせざるを得なかったためである。次年度においても、旅費使用計画(共同研究者の招聘費用や研究成果発表のための出張費用)については大幅に見直す必要があるだろう。その他については計画通り有効に活用する予定である。
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