2020 Fiscal Year Research-status Report
テータ関数の特殊値の研究-代数的構造の解明とその応用-
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18K03201
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
立谷 洋平 弘前大学, 理工学研究科, 准教授 (90439539)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 無限積 / 超越性 / 代数的独立性 / フィボナッチ数 / ルカ数 / テータ零値 / closed from |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、フィボナッチ数やルカ数列といった古典的な二項回帰数列を含む無限積を考察し、その数論的性質(線形独立性、代数的独立性)を明らかにした。得られた主な研究成果は以下の通り。いずれもDaniel Duverney氏(フランス、Lycee Cesar Baggio)との共同研究によるものである。
1. J.-P.Bezivin(2008)は、テータ零値の三重積公式を利用することにより、ある種の無限積関数をチャカロフ関数と呼ばれる無限級数によって表した。この表現を通して、無限級数に対する無理性判定法が、無限積関数やその導関数らに対しても適用可能となる。本研究では、Bezivinの手法を代数体上に拡張し、ルカ数列型の二項回帰数列を含む無限級数および無限積を対象として、それらの無理性や線形独立性に関する結果を導いた。また、研究過程においてフィボナッチ数やルカ数列を含む無限積が代数的数となる非自明なclosed fromsを発見することができた。
2. 1989年、R.Andre-Jeanninはフィボナッチ数F_nの逆数和が無理数であること示した。本研究では、Andre-Jeanninの結果の無限積類似として、フィボナッチ数を含む基本的な無限積Π(1+1/F_n)、Π(1-1/F_n)を考察し、これらがテータ零値らの特殊値の有理式として書き表されることを明らかにした。さらに、Yu.V.Nesterenko(1996)の結果を依拠とするテータ零値の値の代数的独立性に関する定理(D.Bertrand, 1997)を援用することにより、これら2つの無限積は有理数体上で代数的独立であることを示した。本結果は論文としてまとめ現在投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
テータ零値の三重積公式を起点とし、無限積を中心とする様々な数の代数性、超越性、代数的独立性を明らかにすることができたため。これは当初の研究計画において期待されていた応用面の一端である。また同時に本研究過程において、いくつかの興味深いclosed formsを発見できたことは思わぬ収穫であった。研究実績の概要で述べた研究結果については、いずれも論文として纏めることができたことも研究が順調に進展している理由として挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、令和2年度に得られた研究成果を足掛かりとして、無限積の代数的独立性についての研究を推進させる。特に、考察する無限積集合を拡げることは基本的かつ重要な課題である。研究遂行のために関係研究者との情報交換・共同研究を積極的に推し進める。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主な理由は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、海外共同研究者との研究打ち合わせ、および研究成果発表・情報収集に関する出張を全てとりやめたためである。次年度使用額については、状況を適切に判断した上で、当初の研究計画に沿った形で使用する予定である。
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