2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K03219
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
黒田 茂 首都大学東京, 理学研究科, 教授 (70453032)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 多項式環 / 自己同型群 / Anick自己同型 / セグレ多様体 / SAGBI基底 |
Outline of Annual Research Achievements |
多項式環の自己同型に関して「順」と「野生」の概念がある.すなわち,多項式環の自己同型群の「順部分群」に属するとき,自己同型は順であるといい,そうでないとき野生であるという.自己同型の野生性を証明するのは一般に困難であり,正標数の場合や,4次元以上の場合に野生自己同型が存在するか,依然として不明である. 多項式環の場合の類似として,セグレ多様体のアフィン錐の自己同型に対しても,「順」と「野生」の概念が定義できる.Arzhantsevらは2つの射影直線の直積の場合に,野生自己同型が存在することを示した.本年度の前半はその結果の拡張に取り組み,任意標数で,一般のセグレ多様体の場合に,野生自己同型が多数存在することを示した.この研究では「Anick自己同型」の大幅な一般化も与えた.多項式環以外の場合に野生自己同型の概念を定義し,その存在を示す研究は他にもあるが,任意標数,一般次元での結果は初めてであり,高次元の場合の所属問題を考える上で大変興味深い. また,Anick自己同型に関する研究を生かして「Leavitt algebra」の自己同型の研究を行い,新たな非線形自己同型を構成した(Giang Nam Tran氏との共同研究). 上記の研究とは別に,ローラン多項式環の有限生成部分代数で,有限SAGBI基底を持たない例の新たな構成法の開発にも成功した.部分代数のSAGBI基底の有限性を調べるのは一般に難しく,この方面の研究はあまり進んでいない.しかし,本研究で開発した構成法では,凸多面錐,有限生成代数,多項式写像といったありふれた対象を組み合わせることで,有限SAGBI基底を持たない有限生成部分代数の多種多様な例を容易に構成できる.多項式写像の詳細な解析に利用できる可能性もあり,この研究をさらに発展させる計画である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高次元セグレ多様体のアフィン錐の野生自己同型の存在の証明や,有限SAGBI基底を持たない有限生成部分代数の構成法の開発など,いくつかの有意義な成果を上げているため.
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き,国内外の関連分野の研究者たちと情報交換や議論を行いながら研究を進める.前年度の研究を深化させるとともに,新たな方向性も模索する.
|
Causes of Carryover |
研究の展開の状況等を踏まえ,海外渡航や海外からの研究者の招聘,成果発表等を一部見送った.また,新型コロナウイルスの影響で,海外渡航を含むいくつかの出張がキャンセルになった.そのために残額が生じた. これらは,次年度に学会等に参加して成果の公表を行ったり,国内外の関連分野の研究者たちと議論を行ったりするために使用する.
|
Research Products
(8 results)