2018 Fiscal Year Research-status Report
多重ゼータ値のq類似およびその特殊化の代数解析的研究
Project/Area Number |
18K03233
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
竹山 美宏 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (60375392)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 多重ゼータ値 / q類似 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、多重ゼータ値の q類似および 1のベキ根における有限多重調和 q級数について考察している。リーマン・ゼータ関数の正の整数点における値は、自然数の逆数のベキ和であるが、この和を多重化したものが多重ゼータ値である。さらに、この多重和にパラメータ q を入れて変形したものが多重ゼータ値の q類似である。この多重和は無限級数であるが、その有限部分和を適当に取り出すと、パラメータ q を 1のベキ根に特殊化できる。このようにして得られた有限和を、(1のベキ根における)有限多重調和 q級数と呼ぶ。以上の対象について、今年度は次の結果を得た。 (1) 有限多重調和 q級数の特殊値の計算、および大野-Zagier型関係式の証明 (田坂浩二氏、Henrik Bachmann氏との共同研究) 上記の有限多重調和 q級数は、インデックス(ゼータ関数の変数が取る値に対応する正の整数の組)を定めるごとに定まる。同じ値だけからなるインデックスをもつ有限多重調和 q級数を、母関数を使っていくつかの場合に計算し、それが二項係数の和として表されることを示した。さらに、同じ重さ・深さ・高さをもつインデックスに関する有限多重調和 q級数の和の母関数を計算し、大野-Zagier型の関係式を得た。 (2) 多重ゼータ値の q類似が満たす微分関係式の代数的な証明、およびその応用として有限多重調和 q級数が満たす大野型関係式の証明 以前の研究で、多重ゼータ値の q類似を含むあるクラスの無限級数のなす空間において、多重ゼータ値の二つの積構造(調和積とシャッフル積)の q類似が定義されることを示した。今年度の研究では、この空間に非自明な微分構造を導入し、多重ゼータ値の微分関係式の q類似を証明した。さらに、この微分構造を利用して、有限多重調和 q級数の大野型関係式を証明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、1のベキ根における有限多重調和 q級数の積構造の解明および線形関係式の導出を研究目標としている。今年度の研究では、積構造および関連する微分構造を捉え、その応用として線形関係式(大野型関係式)を導出することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
多重ゼータ値については種々の拡張が知られている。今後は、多重ゼータ値の q類似、およびパラメータを 1のベキ根に制限した有限多重調和 q級数について、同様の拡張を構成し、その数学的な構造および性質を調べる予定である。
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Causes of Carryover |
2019年2月中旬に予定していた研究打ち合わせおよび研究集会参加のための国内出張を、急病のため実施できなかった。次年度において同目的の国内出張の経費として使用する予定である。
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