2018 Fiscal Year Research-status Report
モチーフのL関数とレギュレーターの特殊関数論的な研究
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18K03234
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
大坪 紀之 千葉大学, 大学院理学研究院, 教授 (60332566)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | モチーフ / 周期 / レギュレーター / 超幾何関数 / 虚数乗法論 |
Outline of Annual Research Achievements |
以前から行っていた朝倉政典氏との共同研究については、本年度中に2篇の論文が掲載され、2篇の論文が受理(1篇はオンラインで掲載済み)された。また、朝倉氏、寺杣友秀氏との共著論文1篇も受理(オンラインで掲載済み)された。 これらは、超幾何ファイブレーションと呼ばれる多様体族の$K_1$レギュレーターに関する一連の研究に属するものである。これまでの研究で、このような多様体族のレギュレーターは一般超幾何関数${}_3F_2$の特殊値で表されることが分かっていた。新しい研究の一つは、上記の結果を変動させるものであり、レギュレーターには一般超幾何関数そのものが現れる。また応用として、考えるモチーフがTateモチーフとなる場合、一般超幾何関数の特殊値が代数体の単数のlogで表される。そのような具体例を与えるとともに、その変動版も得ることができた。 Bruno Kahn氏との共同研究では虚数乗法を持つモチーフ(CMモチーフ)の不変量について研究を進めている。2018年4月にKahn氏を千葉大学に招聘し、討論を行った。その結果、アーベル型のモチーフに対しては、Gross-Deligneの周期予想、そのフロベニウス類似、Mumford-Tate予想などが成り立つことが分かった。この結果はシドニーにおける国際研究集会で発表した。 また、超幾何関数についての基礎研究を行い、ガウス超幾何微分方程式の新しい標準形を発見した。そしてその応用として、様々な変換公式の統一的かつ簡明な証明を与えた。さらに、$q$超幾何関数(または基本超幾何関数)に対しても、類似の標準形を与え、Eulerの変換公式の$q$類似であるHeineの変換公式の新証明を与えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
超幾何ファイブレーションのK_1に対するレギューレーターに関する朝倉政典氏との共同研究、および一般超幾何関数の特殊値の「log公式」に関する朝倉氏、寺杣友秀氏との共同研究は予定どおり論文にまとめられ、本年度中に2篇が掲載済み、3篇が受理済み(うち2篇はオンラインで掲載済み)である。 虚数乗法を持つモチーフの不変量に関するBruno Kahn氏との共同研究も、概ね順調に進展している。このようなモチーフがアーベル型である場合、それはCMアーベル多様体に付随するモチーフの積に分解する。特に、アーベル体にCMを持つ場合は、フェルマー曲線に付随するモチーフの積に分解する。また、このようなモチーフに対して、p進ホッジ理論を用いて定義されるp進周期についても新たな応用が見つかっている。 また、超幾何関数論の数論への応用を探る中で、予想外に、超幾何関数の基礎研究に関しても進展を得ることができた。超幾何関数が満たす超幾何微分方程式は、ガウス以来長年にわたりよく研究されてきたものである。その微分方程式に対して、新たな標準形を発見した。 超幾何関数は多くの変換公式を満たすということが知られており、現在も多くの研究がなされている。このような変換公式は様々な方法で発見、証明されてきたが、上の標準形を用いると、これらの統一的かつ簡明な証明を与えることができる。この標準形は他にも様々な一般化や応用が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
Bruno Kahn氏との共同研究を継続して発展させる。特に、アーベル型のCMモチーフのp進周期について、複素周期の場合と同様の結果を証明する。さらに、レギュレーターへの応用を研究したい。Eメールによる討論、打ち合わせを継続するとともに、必要に応じてKahn氏を訪問、または招聘して討論を行う。 2019年度は計画通り、国際研究集会「Regulators in Niseko 2019」(世話人:朝倉政典、大坪紀之、佐藤周友、都築暢夫)を開催する。この集会にはモチーフとL関数に関連する研究を専門とする研究者が多く集まる。最新の知見を得るとともに、本研究を推進するために有益な討論を行う。 超幾何関数の変換公式について、その一般超幾何関数への一般化、多変数超幾何関数への一般化を研究する。特に、一般超幾何関数に対するClausen、Orr、Whipple、Baileyらの公式の新しい簡明な証明を見つけたい。 また、超幾何微分方程式の新しい標準形は、変換公式のみならず、多くの応用を持つということが期待できる。例えば、重さが負のEisenstein級数の超幾何関数による表示(Ramanujanの公式の一般化)という数論的な応用が期待できる。 そのような結果の、モチーフのL関数の特殊値に関する予想(Beilinson-Bloch-加藤予想)への応用を研究する。例として、フェルマー型のモチーフのL関数の特殊値を超幾何関数で記述する公式を発見、証明したい。さらに、モチーフのレギュレーターとそれらの関係を調べるなど、多角的に問題に取り組むことが重要である。
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