2020 Fiscal Year Research-status Report
モチーフのL関数とレギュレーターの特殊関数論的な研究
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18K03234
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
大坪 紀之 千葉大学, 大学院理学研究院, 教授 (60332566)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 超幾何関数 / L関数 / 虚数乗法論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的はモチーフのL関数とレギュレーターを特殊関数論的に理解し、ベイリンソン予想などの数論幾何学における主問題に応用することである。本年度は一般超幾何関数の根源にある超幾何モチーフに重点を置いて研究を行った。古典的な超幾何関数は上記のモチーフの特異コホモロジーに現れる。一方, そのl進コホモロジー (ここでlは素数) へのフロベニウス作用に現れるのが有限体上の超幾何関数であり、これについて詳しく研究を行った。 有限体上の一般超幾何関数は1980年代以降いくつかの定義がなされてきたが、本研究では新たな非常に一般的な定義を与えた。その方法はガウス和およびポッホハマー記号を補正するという単純なものだが、その結果、古典的な複素体上の場合との類似が非常に明快になる。それにより、既知の結果の簡明な証明が得られ、新たな和公式、変換公式、積公式などが得られた。得られた結果については論文を準備中である。同じ方法で、より一般的な場合にも古典的な場合に知られているさまざまな定理について、有限体上の類似を証明することができると期待できる。 また、上記の研究と並行して、有理数体上の超幾何モチーフの構成についても研究を進めた。構成は概ねできているが、その性質など、細部についてはこれからである。 Bruno Kahn氏とのCM周期に関する共同研究は、コロナ禍の影響もあり、大きく進んではいない。しかし、本研究では、CM周期に関するグロス-ドリーニュ予想のl進類似を提示している。本年度は、その予想が示せると期待できる場合について、考察を行った。 昨年度中に投稿した超幾何関数の変換公式を証明する新手法に関する論文は、本年度中にRamanujan Journalに受理された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
超幾何モチーフの構成と、有限体上の超幾何関数については、予想以上に研究が進展した。特に後者については、その基礎理論を構築し、古典的な複素数体上の超幾何関数について知られている様々な結果の類似の定理(和公式、変換公式、積公式など)を証明することができた。これに関する論文はほぼ書き終えている。同じ手法は、より一般的な超幾何関数、例えばアッペル-ラウリチェッラ型の多変数の超幾何関数にも拡張できる。 一方、Bruno Kahn氏との共同研究については、コロナ禍の影響もあり、期待したほどには進んでいない。しかし、グロス-ドリーニュ予想のl進類似などについて、一定の進展があった。 また、申請者が参加する予定だった研究集会の多くが中止またはオンライン開催となり、研究打合せを行うことも難しかった。その一方で、オンラインで行うセミナー、会議、研究打合せのノウハウも蓄積され、今後の研究に生かすことができるだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、有限体上の一般超幾何関数の研究に関しては、執筆中の論文を発表し、専門家からのフィードバックを得たい。さらに、超幾何モチーフのp進周期 (ここでpは素数) として定義されるp進超幾何関数と、有限体上の超幾何関数との関係を明らかにしたい。 また、申請者の手法により、有限体上でより一般の超幾何関数を考えることができる。例えば合流型のような、(純粋な)モチーフには付随しないような超幾何関数を扱うことができる。また、アッペル-ラウリチェッラ型のような多変数の超幾何関数を有限体上で考えることができる。これらに関する諸性質の研究を進めたい。とくに、小池-志賀の公式のような、多変数超幾何関数の変換公式を有限体上で示したい。 さらに、複素数体および有限体上の多変数超幾何関数をその実現にもつような、有理数体上のモチーフを構成したい。 Bruno Kahn氏との共同研究については、オンラインのツールを活用するなどして前進させたい。特に、p進ホッジ理論におけるグロス-ドリーニュ予想の定式化や、行列式モチーフに対するl進版の予想の証明を進めたい。 2021年度に開催予定だったレギュレーターに関する国際研究集会は2022年度に延期することになったが、その準備を引き続き進める。
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Causes of Carryover |
COVID-19により全ての出張が中止になり、旅費の支出が0円になったため、次年度使用額が生じた。次年度は社会状況に応じて、共同研究や研究集会への参加を行う予定である。また、オンラインによる共同研究や研究集会への参加のために必要な機器を購入するなど、計画的かつ合理的に研究費を使用する。
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