2020 Fiscal Year Research-status Report
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18K03246
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
阿部 健 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 准教授 (90362409)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 有理曲線 / 双曲性 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度本研究者は,射影空間内の超曲面上の有理曲線について研究を行った.まず研究の背景を述べる.超曲面の次数が射影空間の次元を超えない場合は,超局面はファノ多様体になり,その上には沢山の有理曲線が存在する(ファノ多様体は単有理である).超曲面の次数が射影空間の次元より一つ多いときは,超曲面の標準束は自明となり,その上の有理曲線の存在は微妙な問題となる.そして最後に,超曲面の次数が射影空間の次元より2以上大きい場合は,超曲面は一般型となり,その上には有理曲線が「あまり無い」ことが期待されている.例えば,Green-Griffiths-Lang予想は,超曲面の真代数的部分集合が存在して,複素平面から超曲面への正則写像の像は全てその代数的部分集合に含まれる,と予想している.一般型の超曲面上の有理曲線についての既存の結果は次のものである.n次元射影空間のとても一般なd次超曲面を考える.Einはdが2n-1以上のとき超曲面上には有理曲線が存在しないことを示した.(その証明の鍵は,グラスマン多様体上のあるベクトル束の正性である.)Voisinはdが2n-2以上のとき,超曲面上には有理曲線が存在しないことを示した.Clemens-RanおよびPacienzaはdが3n/2以上のとき超曲面上の有理曲線は超曲面に含まれる射影直線で覆われる代数的部分集合に含まれることを示した.Riedl-Yangはこの結果とFano概形の結果を合わせ,dが3n/2以上のとき超曲面上の有理曲線は射影直線のみであることを示した.これらの研究の状況を踏まえ,本研究者は今年度dが3n/2より小さい場合に,超曲面上の有理曲線について研究し,dが大体7n/5以上の場合に新たな結果を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ベクトル束のモジュライ空間に関するstrange dualityの問題が予想以上に難しく,これに関して新たな結果を得るのが難しいため.
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Strategy for Future Research Activity |
ベクトル束のモジュライ空間のstrange dualityの問題については,進展させることが難しいが,ベクトル束の正性が鍵となっている射影空間内の超曲面内の有理曲線に関しては,まだ新たに研究すべき事柄があると思われる.今年度の研究結果の発展や,その周辺の事柄に関して研究を進めていきたい.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大により,研究集会への参加や研究打ち合わせが延期になったため,これらに関しては,次年度,新型コロナウイルスの感染が収束したのちに実施する予定である.
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