2022 Fiscal Year Annual Research Report
Study on moduli spaces of algebraic sheaves
Project/Area Number |
18K03246
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
阿部 健 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 准教授 (90362409)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 代数的ベクトル束 / 等質空間 / 小林双極性 |
Outline of Annual Research Achievements |
代数多様体上のベクトル束は,接ベクトル束に代表されるように,代数多様体の幾何学的性質を調べる上で基本的な道具である.また,ベクトル束のモジュライは,下部の代数多様体の不変量と思えることのほかに,興味深い代数多様体の例を与えることから,活発に研究されている.今年度の研究結果を簡潔に述べると,等質多様体上のベクトル束の正値性を用いて,等質多様体の超曲面切断内の部分多様体に関する情報を得た,ということになる.以下,研究の背景を交えて,この成果の位置づけを説明する.代数多様体に対する「正値性」には様々な定式化が存在するが,そのうちの一つに小林昭七氏による小林双極性というものがある.これは複素多様体上に定まる小林擬距離が距離になるという条件であるが,多様体がコンパクトな時は,複素平面からの非定値正則写像が存在しない,というブロディー双極性と同値である.サージ・ラングは非特異射影複素多様体が小林双曲的であることは,その多様体の全ての部分多様体が一般型であることと同値であろう,という予想を提起した.これに触発され,アインやヴォアザンは,n次元射影空間内のd次超曲面(ただし一般なもの)に対してその部分多様体を調べ,dが2n以上ならば部分多様体は一般型であることを証明した.クレメンスとランはこの結果を発展させ,dが3n/2以上ならば,d次超曲面内に含まれる直線の和集合に含まれないような部分多様体は一般型であることを示した.この研究では射影空間が等質空間であることが証明の中で一つの鍵になっている.そこでこの結果を等質空間の場合に一般化できないか,という自然な問題が考えられる.本研究者は今年度,この問題に対して概ね肯定的な結果を得ただけでなく,クレメンス・ランの結果の「精密化」も得ることが出来た.
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