2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K03251
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
加藤 希理子 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00347478)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 環論 / ホモロジー代数 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、三角形ルコルマンを有する圏として新しいものが得られた。 捩れ構造は、圏を部分圏に分解し、局所的な分析を可能にする基本的な道具である。 三角形ルコルマンは、三角圏の捩れ構造の中でも、極めて対称性が高い。それゆえ、限られた部分圏の情報から全体を知ることができる。たとえば三角圏ルコルマンを有する圏どうしの函手は、一つの部分圏への制限が同値函手であれば、全体が同値函手である。しかし、実際に三角圏ルコルマンを有する圏は、ほとんど知られていない。 新しい三角圏は、双対化複体を有する環における加群のホモトピー圏である。双対化複体は、射影加群の複体の圏K(Proj)から入射加群の複体の圏K(Inj)への三角函手Tと逆向きの三角函手Sを誘導する。TとSは随伴対ではあるが、一般に同値ではない。これらが「同値になるような」部分圏が、K(Proj)の部分圏Auslander圏とK(Inj)の部分圏Bass圏である。このAuslander圏とBass圏のSによる像を完全三角で貼り合わせたものを対称Auslander圏と呼ぶ。本研究では、この対称Auslander圏が三角形ルコルマンを有することを示した。先行研究として、研究代表者とP.Jorgensenは、有界対称Auslander圏が三角形ルコルマンを有することを示している。有界対称Auslander圏は、対称Aulander圏の部分圏で、ホモロジー的に有界な複体からなる。 今まで知られている三角形ルコルマンにおいては、ホモロジー的な有界性を常に仮定していた。有界性によらない構成ができたことは意味のあることと信じる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
有界性の仮定を用いずに三角形ルコルマンができたことは、三角函手の挙動によって定まる部分圏が、対称性の高い捻れ対を作ることを示唆する。双対化複体のような余傾対象が捩れ対と対応することは古典的な事実である。どのような対象によって三角形ルコルマンが生じるのかという問題意識が新しい理論を発展させることが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
有界対称Auslander圏の対象は, 明解なホモロジー代数的特徴を持っている. 一方、今回構成された対称Asulander圏の対象がどのような性質を持つのかは未解明であるので、これを調べたい。 非輪状複体のなす部分圏が鍵になっているため、実際に複体の分解(導来圏における代表元)を計算する手法を発展させることも有効であると考えている。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大防止の為、当初予定していた出張が中止になった。当該助成金は、研究打ち合わせのための旅費(または遠隔通信整備費)にあてる予定である。
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