2020 Fiscal Year Research-status Report
Geometric approach to the theory of nonlinear functions
Project/Area Number |
18K03254
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Research Institution | Tokyo Woman's Christian University |
Principal Investigator |
吉荒 聡 東京女子大学, 現代教養学部, 教授 (10230674)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アマルガム / 群の一意性証明 / 差分複体 / ケーレーグラフ / Walsh 係数 / DHO / APN関数 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の本来の目的は, 有限体上の非線形関数の本質を「関数が定める幾何学的構造の分析」を通じて解明することであり, 出発点となるモデルは「関数の定めるCayleyグラフ」及び「差分族」である. 前者の固有値が「関数のWalsh係数」であり, 代数的次数が2である関数に対する後者が「関数の定めるDHO(双対超卵型)」であるという観察が発想の原点である. 構想の核は, 一般の代数的次数を持つ関数に対する差分族の概念を定義し, ここにCayley グラフの一般化に相当する単体複体の構造を導入するいう点であるが, この「差分複体」と称すべき構造は一応は定義できるのだが,研究開始当初に期待したような具体性を持つものとはならず, 研究上の道具となる特徴を持っていない.
2019年度には既に行き詰まりの兆候が見られたため, 幾つかの打開策を考えたが, 2020年度は研究の本来の目的に関する本質的な進展は得られなかった.
しかし打開の可能性を与える方向を見出してはいる. まず, 代表者の研究の出発点である散在型単純群について, 群構造の一意性証明の枠組みである「アマルガムの実現」と当初の「関数の幾何学的統制」という構想の間にかなりの類似点を見出した. その結果, 構想の核である「差分複体」の被覆を統御できるような, 部分幾何に相当する「関数族の部分的振る舞いに対する十分な情報の不足」が, 現時点で「差分複体の理論が形式論倒れに終わっている理由」との感触を得た. そこで, やや安易で不自然化ではあるが, 一つの解決法としては, 部分的振る舞いを強く制限できるような関数族に話を限ることにより,何らかの具体的成果が生まれるのではないかと考え始めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
差分複体理論の形式的枠組みが出来たにもかかわらず, 応用例が発想の原点である場合(二次的関数の定めるDHO)に限られ, ほとんど形式論の域を脱していない. 現時点で得られたものは, (いわば単なる形式的なアマルガムの理論のみのようなもので)研究開始当初に期待したような具体性(散在型単純群の一意性証明に応用できるなど)を持つものとはならず, 研究上の道具となる特徴を持っていない.
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Strategy for Future Research Activity |
今までは関数の定義域全体での振る舞いに強く捉われていたが, 部分的振る舞いが統制されるものに話を限り, その張り合わせを差分複体の言葉で表現し, 一般的に分析することから, 差分複体の応用性が高くなるようなより制限された範疇の関数族の候補が見いだせることを期待している. DempfwolffとEdelのAPN 関数の extension 理論の一般化に近い成果を念頭に置いている.
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため出張が行えず,研究討論ができなかったため,次年度使用額が生じた. コロナ禍が解決し, 代表者及び研究連絡者が出張可能となる場合には, 小集会「有限幾何とその周辺」の開催に充てる計画である.
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