2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K03259
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
藤井 俊 島根大学, 学術研究院教育学系, 准教授 (20386618)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 多変数岩澤理論 / pseudo-null部分加群 / 非可換不分岐ガロワ群 / マイナス商 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度では、以下の結果1.2.を得ることができた。1.不分岐岩澤加群のpseudo-null部分加群の存在について。p,qを素数とし、p≡5 mod8、q≡7 mod16、(q/p)=1を満たすとする。(q/p)は平方剰余記号である。k=Q(√-q),F=k(√p)とし、(2)=LL'をkでの2の分解とする。N/kをL外不分岐Z_2拡大、K/kを Z_2^2拡大とする。以下の定理を得た。 定理1.FN上の不分岐岩澤加群が非自明な有限部分加群を持てば、FK上の不分岐岩澤加群は非自明なpseudo-null部分加群を持つ。 素数が基礎体で不分解あるいは完全分解する場合に、非自明なpseudo-null部分加群の存在に関する結果を当該研究者は得ていたが、定理1では、基礎体Fで素数2は不分解でなく、完全分解もせず、既存の研究の範囲を超えることができた。test caseとして素数2,p,qに制限を付ける形で研究を行っていたが、より一般的な結果が得られると考えている。また、FK 上の不分岐岩澤加群が非自明なpseudo-null部分加群を持てば、Q(√-pq)の円分的Z_2拡大上の最大不分岐2拡大のガロワ群は非可換自由群とはならないことが確かめられる。ただし、2018年度に、早稲田大学尾崎学氏は別の手法を用いてこれを示したことをアナウンスしている。岩澤理論、尾崎氏の手法を次年度以降により発展させる研究を行う。2.円分体のイデアル類群のマイナス商について。nを正整数とし、C_n^-をn分体のイデアル類群の、最大実部分体のイデアル類群による商群とする。 定理2.任意の有限アーベル群Cに対して、ある正整数nが存在し、C_n^-はCと同型な部分群を持つ。 Cornellはn分体のイデアル類群に対して同様の結果を得ていたが、その結果を精密化することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
非可換不分岐ガロワ群、多変数岩澤理論の研究では、これまでになされていなかった、基礎体で素数が不分解あるいは完全分解でない状況について新たな結果を得ることができたが、いまだtest caseでの結果のみであり、より発展させる必要がある。また、弱Greenberg予想に相当する結果を得ることができなかった。2018年度中に、早稲田大学の尾崎氏によって新たな手法での研究が提案されたため、今後はより多様な研究手法の開発が必要である。また、幾人かの研究者たちとの交流の中から、円分体のイデアル類群における研究を生み出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
多変数岩澤理論の研究において、近年、深く関係すると考えられる理論の成果が次々と得られてきている。p進Lie拡大の岩澤理論、馴分岐岩澤加群の理論、arboreal表現の理論、などがこれに相当する。当該研究では、非可換不分岐ガロワ群の構造と、多変数岩澤理論における一般Greenberg予想を重視して研究を行ってきたが、上記の理論たちにおいても、一般Greenberg予想および弱一般Greenberg予想と、非可換不分岐ガロワ群との関連性の研究を進めることは有意義であると考えられる。また、早稲田大学の尾崎氏によって、非可換不分岐ガロワ群の新たな研究手法が提案されたこともあり、より多様な側面からの研究を行うことは重要であり、2019年度に研究を進める予定である。また、円分体のイデアル類群の研究を生み出すことができたため、2019年度以降も円分体のイデアル類群の研究を続行する予定である。
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Causes of Carryover |
2018年4月に現職場へ異動したため、特に前期は通常業務に慣れるために時間がかかり、出張を行うことが難しかったことが挙げられる。2019年度は海外での研究集会が幾つか予定されており、それらの参加にあてる予定である.
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