2022 Fiscal Year Research-status Report
量子トロイダル代数に付随する差分方程式とハイパーケーラー商
Project/Area Number |
18K03274
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
菅野 浩明 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 教授 (90211870)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 量子可積分系 / 超対称ゲージ理論 / 離散パンルヴェ方程式 / ケーラー WZW 模型 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021 年 11 月に S.Shakirov 氏が提案した変形 Virasoro 代数の共形ブロック(の類似)に対する非定常差分方程式に関する共同研究を行った.5次元版の AGT 対応によれば,変形 Virasoro 代数の共形ブロックに対応するのは面欠陥付きの K 理論的 Nekrasov 分配関数であるが,Shakirov 氏は,この対応を通して K 理論的 Nekrasov 分配関数を調べ,これまで知られていなかった非定常差分方程式を発見した.我々は適切なゲージ変換により,この方程式が VI 型の非定常離散パンルヴェ方程式の量子化とみなせることを明らかにした.一般に離散パンルヴェ方程式の時間発展は拡大アフィンワイル群の適切な並進元によって定義されるが VI 型の場合はアフィン Kac-Moody 代数 D_5^{(1)} の拡大アフィンワイル群を考える.このとき離散的な時間発展を定める並進元を非可換な力学変数の空間上で表現したものが Shakirov 氏の非定常差分方程式のハミルトニアンとなっている.
これとはやや異なる方向の研究として、4次元ゲージ場に対する反自己双対 Yang-Mills 方程式に等価な Yang 方程式を与える理論として4次元ケーラー Wess-Zimuno-Witten 模型のソリトン的な古典解に関する共同研究も行った.具体的には 1-ソリトン解の作用密度を計算し,確かに余次元1の平面に局在するしていることを確認した.また n-ソリトン解について作用密度の漸近的振る舞いを調べて,位相のずれを伴うという意味で1ソリトン解の非線形な重ね合わせとみなせることを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までは、コロナウィルス感染拡大によって予定していた研究計画や海外の研究者との研究交流が遅れていたが、今年度に入ってオンラインによる研究交流がようやく軌道に乗り始めて共同研究に大きな進展があった.特に概要に書いた面欠陥付きの K 理論的 Nekrasov 分配関数に関する非定常差分方程式については,研究計画当初は全く予想していなかった新しいタイプの差分方程式であり,その幾何学的背景や意味を明らかにするという新たな課題を提供するものである.面欠陥付きの分配関数に対応するモジュライ空間はアフィン Laumon 空間として知られているが,この空間はハイパーケーラー商として表すことができないという点で,差分方程式を導く原理を明らかにすることは興味深い問題である.今年度の研究成果として明らかになった離散パンルヴェ方程式との関係が,その手がかりとなる可能性がある.
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Strategy for Future Research Activity |
面欠陥付きの Nekrasov 分配関数に関しては,アフィン Laumon 空間をモジュライ空間とする記述も知られている.この記述の利点はカレント代数の対称性を持つことであり,その量子化である量子アフィン代数や量子トロイダル代数の表現論が活用できる.この観点から Shakirov 氏の非定常差分方程式は,量子 Knizhnik-Zamolodchikov 方程式として理解できることが期待できる.量子 Knizhnik-Zamolodchikov 方程式の解の構成法としてJackson 積分を用いた方法がよく知られている.K 理論的 Nekrasov 分配関数の Jackson 積分表示を利用して,これを肯定的に解決して,本研究課題の研究テーマとの具体的な関連を見出すことを目標とする.
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Causes of Carryover |
コロナウィルスの感染拡大により,予定していた海外出張ができなかったことを主な理由として次年度使用額が生じた.令和 5年 6月にイタリアへの出張を予定している.
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