2020 Fiscal Year Research-status Report
Integration of homotopical and analytical methods in the frame work of diffeology
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18K03279
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
島川 和久 岡山大学, 自然科学研究科, 特命教授 (70109081)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 微分空間 / モデル圏 / シュワルツ超関数 / コロンボー代数 / カレント |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで展開してきた微分空間の圏のモデル構造および微分空間上の一般関数の構成に関する研究に加え,新たに一般の微分空間上の漸近微分形式の研究に着手し,以下のような成果を得た。 (1) 微分空間の圏のQuillenモデル構造の構成と位相空間の圏のモデル構造とのQuillen同値性の証明は前年度までの研究で概ね完成していたが,理論の見通しを良くするために理論構成の再編を行った。 (2) Schwartz超関数は,解析学を物理学や工学分野に応用する上で必要不可欠な道具立てであるが,超関数の積が一般的には構成できないという難点を抱えている。この欠陥を解消する手段として,Colombeau代数を始めとする一般関数の代数は極めて有効であり,既に応用面でも幾つか成功を収めている。我々は,ColombeauおよびTodorov-Vernaeveの構成法を融合する形で改良して,任意の微分空間の間の一般写像を構成し,それを「漸近写像」と名付けた。微分空間と漸近写像からなる圏は,完備性・余完備性を始めとして微分空間の圏がもつ優れた性質を継承し,解析学のみならず微分空間のホモトピー論の研究においても極めて有効な手段を提供することが期待される。その一つの例証として,「ホモトピー拡張性質」が一般的に成り立つことを示した。 (3) Colombeau代数の理論におけるスカラーが零因子をもつ環であったのに対し,漸近写像の理論のスカラーは実数体を含む実閉体となる。この利点を活かし,漸近関数を拡張する形で任意の微分空間上の「漸近微分形式」を構成した。漸近微分形式の全体はde Rhamカレントを含み,滑らかな微分形式の全体と同様に,実閉体上の次数付き微分代数をなす。したがって,漸近微分形式は多様体上の微分形式とカレントがもつ様々な特質を併せ持ち,とくに幾何学的測度論の発展に大きく寄与することが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ感染拡大の影響を受けて研究連絡や資料の収集が思うように進まず,研究の進展に若干の遅延が生じているが,でき得る限りの範囲で努力を重ねている。微分空間の圏のモデル構造の基礎理論については,幾つかのギャップの修正に手間取ったが,本年度迄の研究でほぼ解決された。一方,微分空間のホモトピー論およびその幾何学的応用の研究については,滑らかな写像に加え,漸近写像を活用することにより研究を大幅に活性化させる目処が立った。また,微分空間上の漸近微分形式の導入は,本研究計画の主要テーマである微分空間の枠組みにおけるホモトピー論的手法と解析的手法の融合に向けた大きな一歩となるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
現在のコロナ感染の状況に鑑み,オンラインでの研究打合せおよびオンライン研究発表を積極的に展開するにより,研究体制の再構築を早急に進める。内容面での方向性としては,代数的位相幾何学で培われたホモトピー論の種々の概念および手法と,関数解析学や微分幾何学で重要な役割を担う微分形式およびその拡張概念であるカレントの理論を微分空間の枠組みにおいて融合発展させる新たな研究手法を確立するとともに,その幾何学的応用の探求を目指す。特に,漸近写像および漸近微分形式を用いた研究を推し進めることにより,軌道体(orbifold)や階層体(stratifold)などの特異点を許す多様体の一般化や,微分空間の概念が極めて有効に機能する研究対象である葉層構造や接触構造などの幾何学的構造の研究において,ホモトピー論が解析的な研究手法と相俟ってどのような成果をもたらし得るか実験的な検証を行う。
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Causes of Carryover |
前年度と同様に,新型コロナウイルス感染の蔓延に伴い,計画していた研究出張の幾つかが中止となり,旅費実額が当初の予定額を大きく下回った結果,次年度使用額が生じている。これについては,翌年度分として請求した助成金の内の旅費等に加算するとともに,関連する研究への研究支援の拡大等に使用したいと考えている。
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Research Products
(1 results)