2019 Fiscal Year Research-status Report
Moduli spaces of flat connections and uniformization of 4-orbifolds
Project/Area Number |
18K03289
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
福本 善洋 立命館大学, 理工学部, 教授 (90341073)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | Donaldson理論 / 4次元軌道体 / 軌道体の一意化 / レンズ空間 / Seiberg-Witten理論 / ホモロジー同境不変量 / 結び目 / bounding genus |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、主に研究計画における(i) 3 次元多様体と結び目の組の bounding genus の定式化と結び目理論への応用、および(ii) 管状の端を持つ4次元多様体と曲面の対の特異インスタントン・モジュライ空間の端の解析に向けた研究に取り組み、以下の結果を得た。 (ii)に関してはこれまで(m,1)および(m,-1)型の2つのレンズ空間の錐を特異点にもつある負定値4次元軌道体に対して、位数mの巡回群による一意化が存在することを証明しているが,そのような特異点が3つ以上ある場合に関しては、4次元軌道体上のインスタントン・モジュライ空間の向きを含めたより詳細な情報が必要であると考えている。本研究では、4次元多様体上のインスタントン・モジュライ空間には「標準的な向き」が入るとするDonaldsonの結果が、4次元軌道体に対しても、blow upを用いることで成立することを証明した。これによって、上記の課題に取り組むための足がかりを得た。 (i)に関しては、3次元球面における結び目Kのbounding genus |K|の定式化を与えた。実際、そのためにまず有理ホモロジー3球面に対して、Z/16を助変数とするホモロジー同境不変量としてbounding genusの定式化を与えた。結び目のbounding genusは3次元球面上の結び目に沿ったDehn手術のbounding genusとして定義され、手術の係数である有理数を助変数とする結び目のコンコーダンス不変量を与える。また、特異な2-把手の接着に構成した4次元軌道体に10/8不等式を用いることで、結び目のbounding genusに対して、対応する有理ホモロジー球面のw不変量による下界評価を得た。さらに特異点解消に現れる特性曲面の近傍を取り去ることで、結び目の種数を用いたbounding genusの下界評価を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
閉4次元多様体上のインスタントン・モジュライ空間に標準的な向きが入るとするDonaldsonの結果を4次元軌道体へ一般化する試みにおいて、幾つかの技術的な困難の解決に時間を要したこともその一因であると考えられる。一般に向きづけられた閉4次元多様体に対しては2球面の直積空間を必要に応じて連結和することで概複素構造を許容させることができる一方で、4次元軌道体の場合にはこの性質が成り立たないこともその一例としてあげられる。この問題に対しては特異点のblow upと楕円型作用素の指数の行列式直線束の切除性によって対処することに時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
課題(ii)において、4次元軌道体上のインスタントン・モジュライ空間の標準的な向きを用いて、モジュライ空間の端に現れる可約平坦接続に伴って生ずる複素直線束を特定する。これにより、直ちに(m,1),(m-1)型のレンズ空間の錐を特異点にもつ負定値4次元軌道体の一意化を得ることができる。次にこれらの結果を、一般の(a,b),(a,-b)型のレンズ空間の錐をもつ場合に拡張することに困難はないと考えられる。この課題を速やかに解決し、4次元軌道体が負定値でないb_2^+=1,2の場合に、モジュライ空間の幾つかの曲面による切り口を考察することで、上記の議論を展開する課題に取り組む。 課題(i)においては、特異2-把手のコアの近傍そのものを取り去る方法が考えられる。その場合には、eta不変量の和公式を考察することで、3次元多様体と結び目の組みに対するw-不変量の定式化に取り組む。
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Causes of Carryover |
今年度末に計画していたインディアナ大学における滞在研究は、新型ウィルス感染症の世界的な感染拡大を受けて見送ることになり、研究計画を大幅に見直す必要が生じた。 次年度は、これまでの成果を論文としてまとめ、国内研究集会において発表を行う。さらに、東京大学における研究者との研究打ち合わせを通じて当年度の課題に取り組み、インディアナ大学における研究者との研究交流を重ね、論文発表、および国際研究集会における研究発表を行う。
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