2022 Fiscal Year Research-status Report
一般のリーマン多様体のラプラシアンの自己共役性ならびにリュービル性
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18K03290
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
正宗 淳 東北大学, 理学研究科, 教授 (50706538)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ラプラシアン / 容量 / ポテンシャル / 自己共役 / リーマン多様体 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度の研究を二つの方向に発展させることができた。一つ目は、完備多様体の閉集合に関する二つの容量の研究の研究である。リーマン多様体には関数空間から定義される容量とポテンシャルから定まる容量の二種類の自然な容量が存在する。本研究ではこれらの容量を研究し、前者はラプラシアンの本質的自己共役性に密接に関係すること、また、後者はハウスドルフ・フラクタル次元と密接に関係することが明らかになった。さらに、これら二つの容量に関する極集合が一致するための条件を、log-Sobolevタイプの関数不等式を用いて得た。以上の結果の重要な例として、ある条件下でのグロモフ・ハウスドルフ収束の極限に現れる距離測度空間の正則集合に当たる、非完備多様体のラプラシアンは本質的自己共役であることが明らかになった。以上の結果は、M. Hinz氏、S. Kohei氏との共同研究により得られた。現在投稿中である。 二つ目は、特異集合(リーマン多様体の完備化と多様体の差集合)が対称性を持つ非完備多様体の特異集合を精密に調べ、それが(ある種の容量に対して)極であることと、ラプラシアンが本質的自己共役であることが同値であることを示した。近年、このタイプの多様体のラプラシアンの本質的自己共役性の研究が発展してきたが、本研究成果のように、それを容量で特徴づけたものは知られていないようである。さらに、特異集合のフラクタル次元とラプラシアンの本質的自己共役性の関係の研究はこれまでも多くなされてきたが、それらの全ては、余次元が4であることが後者のための(ほぼ)必要十分条件であることを示してきた。今回は、より一般的な多様体を精密に調べることで、実は、これが一般的には正しくないことを例を構成することで明らかにした。以上の結果は、A. Inoue氏、R. Wojciechowski氏との共同研究により得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
M. Hinz氏、S. Kohei氏との共同研究により得られた成果は当初の予想を超えて精密な結果を得ることができた。また、リーマン多様体にとどまらず、より一般の距離測度空間にも研究対象が広がった。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の研究を通して、二つの容量の関係、また、本質的自己共役性と特異集合の測り方が重要であることが明らかになってきた。共同研究者も同様な問題意識を共有しているため、今後もその方向性で研究を推進することを予定している。
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Causes of Carryover |
コロナのため予定していた海外出張等が中止になり,次年度使用額が生じた.
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