2020 Fiscal Year Research-status Report
Singularity theoretic study of surface singularities
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18K03301
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
佐治 健太郎 神戸大学, 理学研究科, 教授 (70451432)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 特異点 / コースティック / 波面 / 型変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
コースティックの微分幾何の研究を行った。コースティックは関数の臨界点集合として定義されるもので、関数の余階数が1であれば助変数表示を持ち、波面となる。そのため波面の研究に帰着できるが余階数が2以上の場合は助変数表示をもたないため、この場合のコースティックの微分幾何的研究はさほど進展していない状況であった。本年度はまず余階数2の代表的臨界点であるD4型臨界点に対して、定義域の原点でブローアップを考えると、そのコースティックは助変数表示をもち、さらに波面となることを示した。このことを利用し、原点に入射しているカスプ辺特異点に対して定義されている種々の曲率の計算を行った。また、特異点付近のガウス曲率が0となる集合の振る舞いを調べ、ジェネリックな振る舞いの分類を行った。 昨年に引き続き、特異点付きのモデル曲面としてカスプ辺を用いて特異点付き曲面の幾何を研究した。零点集合がカスプ辺となる関数を空間内で考え、その中に与えられた特異点付き曲面との合成がどのような特異点になるかの条件を特異点付き曲面がホイットニーの傘、カスプ辺、スワローテイルの場合に詳細に与えた。さらにこれらの条件を各特異点付き曲面の微分幾何的不変量を用いて特徴づけた。スワローテイルの場合はモデル曲面との接触が接空間を共有しない場合でもスワローテイルの特異曲線のカスプ的曲率とカスプ辺のカスプ的曲率の関係によっては深く退化した臨界点が現れることがわかった。 特異点をもつ曲線から作られる回転面の性質について研究し、曲面上の曲線の正規化された曲率の理論の整備とともに回転面の曲率からもとの曲線の情報がどれだけわかるかの研究を行った。 他にも、カスプ辺の異性体と折り紙写像の関係、写像芽の像の一致と右左同値の関係、特異点の射影と接触柱面の研究、射影に現れる特異点と接触柱面との接触との関係などを研究した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
正則曲面の臍点における焦面に現れるなど、頻繁に現れる特異点付き曲面であるD4臨界点のコースティックに対して今まで微分幾何的研究があまりなかったが、定義域の原点でブローアップを考えると、そのコースティックは助変数表示をもち、さらに波面となることが示せた。このことを利用し、様々な微分幾何的性質を明らかにできた意義は大きい。また、助変数表示を与えたので、これは今後の研究の基礎となる重要な結果であると思われる。さらにカスプ辺を用いた特異点付き曲面の幾何の研究が進展し、スワローテイルの特異曲線のカスプ的曲率とカスプ辺のカスプ的曲率の関係によって、深く退化した臨界点が現れることを明らかにできた。 これら以外にも、特異点付き回転面や接触柱面の研究で特異点をもつ曲面の微分幾何学の研究を進展させることができた。また、カスプ辺の異性体と折り紙写像および特異点の対称性の研究も進展している。これらのことから、研究は計画通り進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に継続してコースティックの微分幾何の研究を行う。D4臨界に対してはブローアップにより助変数表示を持ち、波面となることが示せたが、他の臨界点に対してはまだわかっていない。まずはコースティックを考える際に重要となる関数の同値関係に対して、空間の微分同相写像を等距離写像のみを使った場合のモジュライ関数の研究を行う。モジュライとして出てきた関数はすべて微分幾何的不変量である。そしてブローアップを考えて、コースティックの助変数表示を探す。また、D4特異点に対しても、昨年度に与えた助変数表示を用いてさらなる微分幾何的性質の研究を行う。具体的には、特異点付近における曲率線、漸近線、特性線の振る舞いを研究する。これはブローアップされた空間からの助変数表示において考える必要があるため、このための理論を作る必要があると思われるが、そこから手を付けて、これらの振る舞いを調べる計画である。 また、カスプ辺を用いて特異点付き曲面の幾何の研究も行う。昨年度までの研究では波面については十分満足いく結果が得られたと思われるが、波面にならない写像に対してはホイットニーの傘にとどまっており、まだ研究の余地がある。特にSタイプと呼ばれる特異点は特異点を通る通常カスプがある。この通常カスプのカスプ的曲率とカスプ辺のカスプ的曲率の関係が零点集合がカスプ辺となる関数との合成の臨界点にどのような影響を及ぼすかを明らかにする。 特異点を通る曲線の幾何に関してもホイットニーの傘以外の特異点は深く調べられていないため、ブローアップとの関係をさらに調べる。特異点付き曲線の回転面の性質も調べる。ミンコフスキー空間内の型変化する曲面の特異点論的研究は、スワローテイル型の型変化の場合から研究し、光的方向による微分を定義することに挑戦する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大のため、予定していたブラジルへの渡航ができず、マルティンス氏・ルアス氏との対面討論ができなかった。また、予定していたスペインへの渡航ができず、オセットシンハ氏との対面討論ができなかった。さらに、関西地域、関東地域、北海道での感染も多く、国内出張の計画はこれらの地が多かったため、国内出張もできず、予定していた研究討論ができなかった。 遠隔会議の設備をある程度整えたが、数学においては黒板を挟んだ対面での議論が必要不可欠であるため、2021年度に出張を延期して、2020年度は遠隔議論で直接討論の準備を調えることとし、直接の討論による研究討論を2021年度に行うことにした。 繰り越した研究費は主にブラジル・スペインへの渡航と北海道大学・室蘭工業大学・岩手医科大学・埼玉大学・東京工業大学・広島大学・長崎大学への出張旅費として使用し、各研究機関の研究者と黒板を挟んだ討論を行う計画である。
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Research Products
(10 results)