2019 Fiscal Year Research-status Report
劣拡散的なランダム媒質中の多次元拡散過程の漸近挙動と極限分布の研究
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18K03324
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
高橋 弘 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (30413826)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 確率解析 / ランダム媒質 / Weakly dependence |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き,1次元に満たないフラクタル図形上にランダム媒質がある場合を考察し,国内の複数の研究集会で発表した。1次元に満たないフラクタル図形では,極端に拡散のスピードが遅くなる極限定理が,図形が持つ幾何的な次元に拠るスケーリングの下で得られることがわかった。このスケーリングは,従来の研究とは大きく異なる点が特徴的といえる。現在は,この成果を論文として発表するための準備をしている。
また,1次元に満たないフラクタル図形上の拡散過程は,1次元のブラウン運動でモデル化される拡散過程に比べ,拡散のスピードが速い``super-diffusive''という性質が知られている。フラクタル図形上にランダム媒質を配置することで,上記のような拡散のスピードが極端に遅くなる現象が見られるが,ランダム媒質の影響が弱いモデルを考えることで拡散のスピードが1次元のブラウン運動と同様になる場合があることがわかった。この方向からの研究は,次年度にも引き続き継続する。
前述の2つのモデルについては,ランダム媒質の持つ自己相似性に注目することで考察を進めることになる。この点から,自己相似性を持つ確率過程に関する研究も進めている。また,ランダム媒質中の拡散過程のモデルとして,遅れのある確率微分方程式を採用し,その解の挙動を調べる,という方向性での研究も始めた。遅れのある確率微分方程式はマルコフ性を持たないことから,解の存在が保証されても,その解の表現を陽に与えることは難しい。そこで,近似解を求め,真の解への収束の速さを求めることが重要になる。今年度は,収束の速さと信頼区間に関する研究を進め,シミュレーションスタディの結果を含む,応用的な話題を含む論文を発表した。この成果を一般論に展開する研究にも着手している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1次元に満たないフラクタル図形上のランダム媒質の問題について,いくつかの方向で研究が進展した。また,確率微分方程式を用いてランダム媒質の新しいモデルを考えた点についても,多次元のランダム媒質中の拡散過程の挙動を把握するための新たな手掛かりとなる可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度に考察した問題について,論文を引き続き作成することを第1とする。また,複数の国外・国内で行われる研究集会において講演する予定だったが,新型コロナウイルス感染症のために中止になっている現状である。そこで,国内外の研究者と打ち合わせをできるような環境を構築する予定である。
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Causes of Carryover |
海外渡航を計画していたが,学内業務等および新型コロナウイルス感染症拡大のため,旅費の使用ができなかった。感染症まん延の収束が見えない現状としては,web会議などができるような環境の構築を図るための物品費としての使用を予定している。
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