2021 Fiscal Year Research-status Report
劣拡散的なランダム媒質中の多次元拡散過程の漸近挙動と極限分布の研究
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18K03324
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
高橋 弘 慶應義塾大学, 商学部(日吉), 准教授 (30413826)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 自己相似確率過程 / ランダム媒質 / 1次元拡散過程 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では,ランダム媒質中の拡散過程の漸近挙動を確率論の手法を用いて調べることを目的としている。対象としては,ランダム媒質の影響を受け,通常の拡散過程と比較すると拡散速度が極端に遅くなる場合を考察している。 2021年度は,主に1次元に満たないフラクタル図形上にブラウン運動に由来するランダム媒質を与え,その中での漸近挙動を考察し,その結果を研究集会で発表した。また,この内容をまとめた研究成果を論文にまとめ,現在,専門誌に投稿中である。1次元に満たないフラクタル図形上の拡散過程について,極端に遅い拡散現象を見せるモデルは,数理物理の立場からシミュレーションなどによる結果は知られているが,確率論による考察は行われておらず,その点において新規性のある成果が得られた。また,査読者からの指摘で,本研究とは異なるアプローチでの考察があることもわかり,その方向への発展も見込まれる。 上記の論文に引き続き,一般的な自己相似性を持つ確率過程をランダム媒質のモデルとした場合についての研究にも着手しており,そちらについてもいくつかの極限定理を得ることができた。現在は,ランダム媒質が漸近的に確率過程に収束するような,離散的なモデルから連続的なモデルに変化するような問題について考察している。 これらの問題は一般化された1次元拡散過程の理論を用いて示されるが,ランダム媒質のモデルによっては,今までの理論が使えない場合もでてくることが判明した。このようなランダム媒質中の拡散過程の漸近挙動を解析するなかで出現する数学的問題も,並行して考察している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ランダム媒質中の多次元拡散過程の問題については,研究に目立った進展は見られなかった。一方で,1次元に満たない場合について考察することで,ランダム媒質中の拡散過程の問題解決を通じて,確率過程に関する一般論へと発展する可能性のある問題を見出すことができた。これらの点を考慮して,総合的には,研究の進捗状況はやや遅れていると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
現在,成果が得られつつある問題の一つが,1次元に満たないフラクタル図形上に自己相似性を持つランダム媒質を与え,その漸近挙動を示すことである。まずは,この課題についてひと段落をつけ,研究成果を論文として発表することに専念する。また,今までに知られている1次元拡散過程のモデルにも,我々の研究で用いた手法を用いることで証明が簡略化される,などの可能性がある。このような点に注目することで,現在までに得られた手法の整備を含めた研究にも着手する予定である。
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Causes of Carryover |
国内外で行われる研究集会において講演する予定だったが,新型コロナウイルス感染症のために再延期されることになった。また,海外の研究者を招聘する予定があったが,それについても実施できなかったこともあり,そのため余剰金が生じた。 そこで,WEB会議によって共同研究や研究打ち合わせを行うにあたり,円滑に進めるための機材の購入を中心に使用する。さらに事情がゆるせば,申請時に予定していた海外出張を行うための経費として使用する予定である。
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