2022 Fiscal Year Research-status Report
劣拡散的なランダム媒質中の多次元拡散過程の漸近挙動と極限分布の研究
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18K03324
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
高橋 弘 慶應義塾大学, 商学部(日吉), 准教授 (30413826)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 自己相似確率過程 / ランダム媒質 / 1次元拡散過程 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.非連結なフラクタル上の拡散過程について,ランダムな環境を与えたときの漸近挙動について考察した。以前に考察した均質化の問題では,ある適当なスケーリングの下でフラクタル図形上の確率過程に収束することを示したが,本研究では,ランダムな環境の影響で局在化が見られることを示した。本研究の結果は,査読を経て,国際誌に掲載された。 2.上記の研究では,ランダムな環境のモデルとして分散が存在する場合を考察したが,安定分布のような分散や平均が存在しない場合を考察することは自然な拡張である。この観点からの研究を進めて,異なるスケーリングの下で局在化が見られることを示した。また,ランダムウォークの極限として局在化の問題を考察する研究にも着手した。対象が1次元の格子点ではなく,非連結なフラクタル図形であることで,いくつかの難点があるが,解決に向かう方針は得られている。 3.遅れを伴う確率微分方程式を用いて,新たなランダム媒質中の多次元拡散過程のモデルを構築した。この確率微分方程式の解は,過去の挙動に影響されることからマルコフ性を持つとは限らず,拡散過程の性質を調べるためには近似解を用いた解析が有用になると考えられる。このような理由から,近似解とその評価について考察した。この研究の結果は,査読を経て,国際誌に掲載予定である。 4.1次元拡散過程について,正側と負側に異なるランダム媒質が与えられている場合の問題について考察した。従来のモデルでは媒質に分散がある場合が考察されたが,本研究では分散が存在しない場合を扱っている点が新規性である。この結果は,統計数理研究所が発行する共同研究リポートで発表し,現在は投稿準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ランダム媒質中の拡散過程について,1次元拡散過程の一般論を用いて研究を進めた。その結果,1次元に満たない場合について,極限分布の存在を示すことができた。また,その延長として局在化についてもある程度の目途がついたこと。 また,この研究を通じて得られた1次元拡散過程の一般論を用いて,1次元の場合について,別なモデルにも適応可能であることがわかり,新たな視点での研究を始めることができた。以上の2点について,研究課題が順調に進展しているという自己評価を与える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は多次元のランダム媒質中の拡散過程を考察することが当初の目的であったが,当初のモデルとは異なるモデルについて,いくつかの結果を得た。この手法を当初のモデルに還元する方向での考察を進める。 また,社会情勢を鑑み海外出張を控えていたが,今後は,今までに得られた結果を含む内容を海外での研究集会等で発表する。その結果,新しい方向性での研究が進むことが期待できる。
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Causes of Carryover |
海外・国内の出張を計画し,旅費を計上していたが,今年度は社会情勢を鑑み,出張回数が少なかったため,次年度使用額が生じた。 これらの助成金については,国内外の学会参加費として支出予定である。また,現在準備中の論文作成,およびオープンアクセスなどの費用として支出予定である。
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