2018 Fiscal Year Research-status Report
Singular limit of the magnetic Schroedinger operators and related inequalities
Project/Area Number |
18K03329
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
峯 拓矢 京都工芸繊維大学, 基盤科学系, 教授 (90378597)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 数理物理学 / 大域解析学 / 量子力学 / スペクトル・散乱理論 / アハラノフ・ボーム効果 / 点相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度までは外村らによるアハラノフ・ボーム効果の検証実験の理想化である、3次元空間のリング内に台を持つ磁場に関する散乱波の計算を行ったが、その結果では対応するシュレディンガー方程式が扁平回転楕円体座標を用いて変数分離法で解けることが本質的だった。2018年度は、ヘルムホルツ方程式が変数分離法で解けるようなより一般の座標について、同様の考察を試みた。そのような座標は19世紀にヤコビによって研究・分類されている。特に3次元では楕円関数を用いて表されるヤコビ楕円座標を用いると、3次元空間内の楕円とその内部を通過する2本の双曲線上に量子化された磁束を持つ磁場について、対応するシュレディンガー方程式の解が具体的に書き表せることを示した。 また、関連する問題として、空間次元が1、2、または3のユークリッド空間において、無限個の点の上に台を持つ点相互作用の自己共役性についての研究を行った。従来の結果では、次元が2または3のときには2点間の距離が正の下限を持つ場合に自己共役性が証明されていたが、例えばランダムな点配置の一つであるポアソン配置の場合にはこの条件が満たされず、研究上の障害となっていた。これを解決するため、2点間の距離の下限が0であっても、それらをそれぞれ有限個の点からなるグループに分け、グループ同士の距離の下限が正である、という条件が満たされれば、作用素は自己共役になることを示した。この結果はポアソン配置の場合にも適用でき、理論の発展が期待される有用なものである。さらに、これを利用して、ポアソン・アンダーソン型の点相互作用ハミルトニアンのスペクトルの研究を東北学院大学の神永正博氏、学習院大学の中野史彦氏と共同で行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特異磁場に関する新たな事実も発見され、さらに19世紀のヤコビの結果を援用することによりさらに多次元の場合にも研究を進める見通しができた。点相互作用の問題についても、現在まで研究の障害となっていた自己共役性の問題が解決され、さらなる発展の見通しが立った。
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Strategy for Future Research Activity |
前述のように、3次元のヤコビ楕円座標を用いると、対応する特異磁場のシュレディンガー方程式が解けることが分かった。この解を具体的に計算するためには、3つのスペクトル・パラメータを持つ3本の常微分方程式を同時に解く必要があり、数値計算の問題としても興味深い問題と言える。まずはこの問題について取り組みたい。さらに、4次元・5次元でもヘルムホルツ方程式を変数分離で解ける座標を用いて特異磁場を考えることが出来るが、この場合には対応する物理現象があるのか? というのがまず問題になる。この点についてもさらに研究を進めたい。 また、点相互作用の問題についても、現在までの結果では点相互作用のみが存在するときを考えていたが、その他のスカラーポテンシャルや磁場と組み合わせる問題も考えることができ、それぞれ興味深い問題である。可能な限り結果を一般化し、さらなる発展を目指したい。
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