2019 Fiscal Year Research-status Report
Singular limit of the magnetic Schroedinger operators and related inequalities
Project/Area Number |
18K03329
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
峯 拓矢 京都工芸繊維大学, 基盤科学系, 教授 (90378597)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 数理物理学 / 大域解析学 / 量子力学 / スペクトル・散乱理論 / アハラノフ・ボーム効果 / 点相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
空間次元が1、2、または3のユークリッド空間において、無限個の点の上に台を持つ点相互作用を持つシュレディンガー作用素の自己共役性、およびポアソン・アンダーソン型点相互作用を持つシュレディンガー作用素のスペクトルに関する学術論文を、東北学院大学の神永正博氏、学習院大学の中野史彦氏との共著で投稿し、出版された。前年度までに自己共役性に関する結果は得ていたが、スペクトルに関する結果も新たに発表した。その結果では、2、3次元のポアソン・アンダーソン型点相互作用では、点相互作用のパラメータがどのようなものであっても、スペクトルの下端が負の無限大になるという、一見すると直感と異なる現象が見出された。これに関して、数学的な証明を与えるとともに、点相互作用の通常のポテンシャルによる近似などを用いた説明を与えた。 さらに、2019年末頃からは、(1)定数磁場とポアソン・アンダーソン型点相互作用を併せ持つシュレディンガー作用素のスペクトルに関する研究、(2)ポアソン・アンダーソン型点相互作用を持つシュレディンガー作用素のリフシッツ・テイル(負の無限大における積分された状態密度の漸近挙動)の研究も開始した。(1)の結果は概ね予想通りのものであったが、(2)の結果では、通常のポアソン・ランダム・ポテンシャルの場合とは異なる漸近挙動が見出された。(1)については2020年1月に行われた国際研究集会「Schroedinger Operators and Related Topics」において、(2)については2020年1月に行われた国際研究集会「Spectra of Random Operators and Related Topics」において発表を行った。現在、これらの結果についての論文を執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
無限個の点の上に台を持つ点相互作用を持つシュレディンガー作用素の自己共役性およびスペクトルに関する結果が学術誌に掲載された。さらに、リフシッツ・テイルに関する新たな結果も見出され、さらなる一般化や発展が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、昨年度末に得た(1)定数磁場とポアソン・アンダーソン型点相互作用を併せ持つシュレディンガー作用素のスペクトルに関する研究、(2)ポアソン・アンダーソン型点相互作用を持つシュレディンガー作用素のリフシッツ・テイルの研究、についての結果をまとめ、学術誌に投稿する。さらに、これらの系に関する準位統計(有限体積領域に制限した作用素の固有値の確率分布の、体積を無限大にした極限をとったときの極限分布)についても研究を進める予定である。共著者の一人である中野史彦氏は準位統計の権威の一人であり、アンダーソン型点相互作用に関する結果は既に Hislop-Kirsch-Krishna により得られていることを考えると、十分に実現可能性はあると考えられる。ただ、通常のアンダーソン型と我々の系との違いは、行列で表すと、アンダーソン型では対角項のみにランダム性があるのに対し、我々の系では非対角項にランダム性が入っている。このため、技術的な困難が生じることが予想され、その点の克服が課題であると言える。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染防止のため、日本数学会他多数の研究集会が中止になり、使用を予定していた旅費が使用できなくなった。新型コロナウイルスが収束したのち、旅費などに使用する予定である。
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