2020 Fiscal Year Research-status Report
モンテカルロ積分における困難事象の解決のための研究
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18K03330
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
杉田 洋 大阪大学, 理学研究科, 教授 (50192125)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | モンテカルロ積分 / ランダム・ワイル・サンプリング / ブラウン運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
困難なモンテカルロ積分の事例として,境界のある領域上のブラウン運動の境界への到達時刻の分布の制定問題を取り上げた. (1)1次元の有界閉区間上のブラウン運動が端点に到達する時刻をLevyの折れ線近似を用いて推定する.このとき時間刻み幅を小さくとると精密に推定できるが膨大な計算時間が掛かり,大きくとると計算時間は短いが推定の誤差が大きくなる.正確にかつ素早く推定するために,本研究では端点から遠い領域では折れ線近似の時間刻み幅を大きくとり,端点に近づくにつれ折れ線近似の時間刻み幅を小さくとるアルゴリズムを開発した.具体的には時間刻み幅を次のステップまでに端点に達する確率が99%未満になるときに,時間刻み幅を半分にする,というアルゴリズムを採用した.結果はほぼ満足の行くものであった. (2)半直線[0,∞)上のブラウン運動が0に到達する時刻τは平均が無限大になるのでτの関数のモンテカルロ積分はまったくうまく行かない.そこで負の定数のドリフトを持つブラウン運動(前項(1)の時間刻み幅を変化させたLevyの折れ線近似)でシミュレーションを行い,カメロン-マルティン密度の逆数を重み関数にしてモンテカルロ積分を行う実験をした.ドリフトを大きくすると,早く境界に達するので計算時間は短いが,到達までに時間が掛かる場合に重み関数が非常に大きくなり精度が悪くなる.実用上はごく小さいドリフトを付けるのが適切のようだが,最適の値を得ることについては研究途上である. (3)前項(1)(2)の応用として2次元ラプラス方程式の境界地問題を角谷の定理を応用して解く実験を行った.長方形領域の場合は十分満足の行く結果を得たが,半平面の場合は(2)の方法が確立しきれていないこともあって推定精度を上げることができていない..
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ブラウン運動の境界への到達時刻の分布のモンテカルロ法による精密な推定が平均が有限の場合はうまく達成できたから.
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Strategy for Future Research Activity |
(1)引き続き,ブラウン運動の境界への到達時刻の関数のモンテカルロ積分を,到達時刻の平均が無限大になる場合も含めて精密に行うためのアルゴリズムを研究する. (2)そのほか,モンテカルロ積分が困難な具体的な事例のいくつかについて解決のアルゴリズムを研究する.とくに,線形常微分方程式の不安定な自明解がランダムな線形摂動(線形確率微分方程式)によって安定となる状況を解の分布の最頻値を精密に推定することによって記述する問題に取り組みたい.
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Causes of Carryover |
COVID-19感染拡大防止のため,旅費等の支出がなくなったことで未使用分が発生した. 本年度未使用分454,876円は(本研究終了時に)国庫に返還する.
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Research Products
(1 results)