2021 Fiscal Year Research-status Report
リーマン面の正則写像の研究――把手条件の拡張と応用
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18K03334
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
増本 誠 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (50173761)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴 雅和 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 名誉教授 (70025469)
中村 豪 愛知工業大学, 工学部, 教授 (50319208)
増本 周平 愛知工業大学, 工学部, 講師 (30803861)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | リーマン面 / 流体力学的接続 / アーベル微分 |
Outline of Annual Research Achievements |
種数が有限で正である開リーマン面Rから同種数の閉リーマン面の中への等角的埋め込みを具体的に構成する問題に取り組んだ。特殊な境界挙動をもつR上の正則アーベル微分は流体力学的接続と呼ばれる同種数の閉リーマン面の中への等角的埋め込みを誘導する。周期に関するある極値性をもつこれらの埋め込みは,平面領域からリーマン球面の中への平行截線写像と呼ばれる等角的埋め込みを,有限正種数の場合に拡張したものに相当する。 さて,平面領域の場合,シッファーは,1943年,極とその点でのローラン展開の主要部を共有する互いに垂直な方向の平行截線写像の加法平均が再びリーマン球面の中への等角的埋め込みになることと,この埋め込みが同じ極と主要部を持つ等角的埋め込みの中で像の補集合の面積を最大にする写像であることを示した。加法平均に限らず凸結合も等角的埋め込みになることはその後の研究で知られていた。1987年,柴は,シッファーの定理を,種数が1の場合に拡張した。その際,正規化条件を,流体力学的接続を誘導する正則アーベル微分が固定されたRの非分離的単純閉曲線に沿って同じ周期をもつことに求めた。その結果として,Rを等角に埋め込ませる種数1の印つき閉リーマン面全体が,タイヒミュラー空間の中でタイヒミュラー距離に関し閉円板または1点になることを導いた。重要な点は,流体力学的接続の凸結合を作る際,対応する正則アーベル微分の凸結合が,接続の結果得られる閉リーマン面上の正則アーベル微分に拡張されることである。 今年度,この柴の結果を種数が2以上の場合に拡張することを試みた。予想に反して,種数が2以上の場合,具体的な反例が存在することが分かった。反例の構成法は,種数2以上の正則アーベル微分が零点を持つことを利用しており,反例が例外的なものではないことも認識される。同時に,この手法を発展させ,種数1の場合の別証明を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
想定外の事態に至ったが,反例を構成する手法が新たな視点や手法を導き,理論の新展開をもたらしそうであるから。
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Strategy for Future Research Activity |
最近の研究から,開リーマン面の閉接続の問題では,アーベル微分よりも2次微分がより本質的な役割を果たすことが明らかになってきている。従来は正則2次微分にこだわっていたが,今後は有理型2次微分を視野に入れて具体的な閉接続を構成する問題に取り組みたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため中国で開催することを計画していた国際研究集会が延期になったことに加えて,国内で開催される学会・研究集会の対面での開催も中止になり,研究打合せのための出張もできなくなったから。オンラインで研究打ち合わせするための機器を更新し,コロナ禍が落ち着いてきたら,研究打合せのための山口と広島,愛知間の出張を再開する予定である。
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Research Products
(7 results)