2021 Fiscal Year Research-status Report
New developments in the research of discrete Sobolev inequalities - Applications to mathematical engineering
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18K03347
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Research Institution | Tsuda University |
Principal Investigator |
永井 敦 津田塾大学, 学芸学部, 教授 (90304039)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
亀高 惟倫 大阪大学, その他部局等, 名誉教授 (00047218) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 離散ソボレフ不等式 / 一般化逆行列 / グリーン行列 / C60フラーレン / 筋交問題 / グラフ理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
理工学の諸分野に登場する差分方程式の境界値問題を設定し、その離散ラプラシアンを定式化、そのムーアペンローズ一般化逆行列を計算する。一般化逆行列は広義グリーン関数の離散化と見なせ、グリーン行列と呼ぶ。グリーン行列はヒルベルト空間を適切に設定すると再生核行列となり、再生等式から離散ソボレフ不等式を導出した。その最良定数はグリーン行列の対角線値の最大値、不等式において等号が成立するベクトル(最良ベクトル)はグリーン行列の一断面である。上述のプロセスを以下の3つの問題に適当した。 (1) C60フラーレンにおける離散ソボレフ不等式:切頂正20面体、つまりC60フラーレン上の離散ソボレフ不等式の最良定数計算を、1812個の異性体で行い、全数調査によって最良定数を求めた。本研究成果は1編の論文としてJSIAM Lettersに掲載された。 (2) 離散化された糸の撓み問題への応用:2階差分方程式で与えられる離散化糸の撓み問題の5種類の境界値問題を設定し、対応するグリーン行列を離散ベルヌーイ多項式やチェビシェフ多項式を用いて表し、離散ソボレフ不等式の最良定数を求めた。本研究成果はSaitama Mathematical Journal に掲載された。 (3) 離散ソボレフ不等式の筋交問題への応用:長方形状の格子に筋交を入れた格子を考える。この格子に外力を加えたとき、歪むかどうかは、対応する2部グラフの連結性を確認すればよいことが知られている。次に筋交の位置は固定して向きだけ変えたとき、どのような向きのとき強度が最大になるか、離散ソボレフ不等式を最良定数の大小比較によって調べることができた。本研究成果は2021年8月に京都大学数理解析研究所研究集会「可積分系数理の諸相」で研究発表を行い、1編の論文としてRIMS Bessatsuに投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
離散ソボレフ不等式についての研究成果は応用数理系や数学系の雑誌に掲載された。特にC60の1812個の異性体上の離散ソボレフ不等式に関する論文は、2021年度日本応用数理学会論文賞(JSIAM Letters部門)を受賞した。この研究は頂点数の少ない低次フラーレンモデルや頂点数の多い高次フラーレンモデル、さらにはデゥアルなフラーレンモデルなどさまざまなモデルに拡張可能であり、さらなる発展や理工学への応用が期待される。 離散化された糸の撓み問題は2階差分方程式で基本的な方程式であるが、境界条件によっては、狭い意味でのグリーン行列が存在せず、対称直交化法という我々の研究グループが開発した手法によって広い意味でのグリーン行列(=再生核行列)を求めた。また離散ソボレフ不等式の最良定数は各種特殊関数を用いて表され、特殊関数の変分学的意味づけを行った。 筋交問題についても、「離散ソボレフ不等式の最良定数」という視点から、その強度を線形代数に基づく初等的な計算で評価することができた。この研究成果についても、1編の論文として投稿した。 その他にも理工学の諸分野に登場するさまざまなグラフ上においても、離散ラプラシアンを設定し、そのグリーン行列を求め調べるという一連の作業を丁寧に行うことによって、理工学の問題に対する数学的基盤を与えるという当初の目標はかなり達成された。
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Strategy for Future Research Activity |
ソボレフ不等式および離散ソボレフ不等式の最良定数に関する研究を深化させる。具体的には拡張されたフラーレンモデルやカーボンナノチューブなどのモデルについて、離散ソボレフ不等式の最良定数や最良ベクトルを丁寧に調べ上げる。 筋交問題についても、離散ソボレフ不等式の最良定数の大小と筋交の強度が関連することは分かっている。その一方で、どの位置にどの向きに筋交を入れると最良定数が小さく、つまり強度が増すのか?この問題についての一般的な理論は簡単な例について予想が得られている段階に過ぎない。簡単な例から始めて筋交の向きと強度に関する一般化された定理を構築し証明したいと考えている。 最後に高階差分方程式や偏微分方程式、偏差分方程式の応用についても今後研究すべき課題である。ソボレフ不等式は20世紀の偏微分方程式論において重要な役割を果たしたが、最良定数を求めることと偏微分方程式との関連について、重調和方程式や高階熱方程式、およびその離散化モデルなどを中心に研究を進めたいと考えている。
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Causes of Carryover |
予定していた研究発表や関西や関東の共同研究者との研究打ち合わせがコロナ禍によって、すべてオンラインになったため、旅費を使うことがなかった。
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Research Products
(2 results)