2018 Fiscal Year Research-status Report
Integrable hierarchies related to Gromov-Witten invariants
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18K03350
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
高崎 金久 近畿大学, 理工学部, 教授 (40171433)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | グロモフ・ウィッテン不変量 / フルヴィッツ数 / ホッジ積分 / 戸田階層 / ヴォルテラ型可積分階層 / τ函数 / 双線形方程式 / 対数的ラックス作用素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は計画の初年度として,溶解結晶模型や位相的頂点などについて昨年まで行っていた研究をさらに発展させて,いくつかの成果を得た. 第1に,リーマン球面のグロモフ・ウィッテン不変量の母函数を溶解結晶模型の分配函数の極限として実現することにより,この母函数が1次元戸田階層のτ函数であることを示した.これはよく知られた事実の再確認ではあるが,今回は戸田階層のフェイ型双線形方程式と呼ばれるものを用いる新たな方法を示した.可積分階層の理論の観点から見れば,この方法は先行研究で用いられてきた方法よりも見通しがよく,位相的漸化式とのつながりも期待される. 第2に,リーマン球面のフルヴィッツ数の母函数がヴォルテラ型可積分階層と関係していることを見出した.この可積分階層はボゴヤフレンスキー・伊藤階層と呼ばれる可積分階層の一種の連続極限でであるが(ボゴヤフレンスキーと伊藤はこの連続極限も考察している),フルヴィッツ数との関係はこれまでまったく予想されていなかった.また,このことを示す際に,戸田階層の対数的ラックス作用素が重要な役割を演じることも注目に値する. 第3の成果として,3次ホッジ積分の母函数(位相的頂点と密接に関わる)がそのパラメータの一連の特殊値においてやはりボゴヤフレンスキー・伊藤階層と関係することを見出した.これはドゥブロヴィンとヤンの先行研究に基づく研究である.彼らはある特別な場合に3次ホッジ積分とヴォルテラ型可積分階層との関係を証明したが,一般の場合は予想にとどまっていた.今回の研究ではこの予想が一般的に正しいことを確認した.ここで用いた方法はドゥブロヴィンらとは全く異なるもので,溶解結晶模型や位相的頂点の研究において開発した道具や考え方を利用している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では,初年度はこれまで行ってきた研究を継続発展させるとともに,新たな題材を探ることを目標にした.この目標は十分に達成することができたと思われる.実際,溶解結晶模型からリーマン球面のグロモフ・ウィッテン不変量への極限移行やフルヴィッツ数・ホッジ積分に関わる可積分階層の考察はこれまでの研究の延長上で行ったものだが,一定の成果を得ることができた.ホッジ積分に関しては,連携研究者の中津了勇氏との共同研究がさらに進展しつつある.さらに,リーマン球面のグロモフ・ウィッテン不変量に関しては,同変グロモフ・ウィッテン不変量と呼ばれるもの(これまで考察してきたグロモフ・ウィッテン不変量の一種の変形)やそれに付随する同変戸田階層(1次元戸田階層の変種)を追求すべきであることがわかり,現在それらの研究に取り組んでいる. 研究計画を次の段階に進めるための予備的調査も進行中である.グロモフ・ウィッテン不変量については,かねてよりオクニコフとパンダリパンデの2000年代前半の一連の論文を基本的な文献として参照し,その主結果であるフェルミオン表示や可積分階層による解釈を研究に利用してきた.現在はこれらの論文の幾何学的部分の解読作業を進めている.また,ホッジ積分に関しては,同じく2000年代前半のK.F.リュウらの一連の論文を詳細に検討し,トーリックカラビ・ヤウ多様体やトーリックファノ曲面のグロモフ・ウィッテン不変量の取り扱いについて学びつつある. 他方,この年度では,ネクラソフ分配函数とパンルヴェ型方程式の関係や,位相的弦理論とスペクトル理論・完全WKB解析との関係など,近年注目を集めている関連分野の研究を学び,新たな知見を得ることも試みた.この試みは現在中断しているが,適当な時期に再開するつもりである.
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の2年目の中心的課題は,リーマン球面のグロモフ・ウィッテン理論に関するオクニコフとパンダリパンデの研究を徹底的に学び,そこから新たな題材を探り出すことである.この課題は可積分階層に関する部分と幾何学に関する部分からなる. 可積分階層については,同変戸田階層との関わりが特に興味深い.オクニコフらは同変グロモフ・ウィッテン不変量の母函数が同変戸田階層のτ函数であることを指摘しているが,その説明は完全なものではない.後にミラノフとツェンがギヴェンタール理論の観点から別の説明を与えているが,本研究ではフェルミオンを用いるオクニコフらの方法で説明することをめざす. 幾何学の部分に関しては,トーラス作用に基づくグロモフ・ウィッテン不変量の局所化計算をある種のグラフによって表示する方法を学びたい.オクニコフらは同変グロモフ・ウィッテン不変量のフェルミオン表示をこのグラフ展開から導出している.このような局所化計算の方法はK.F.リュウらのホッジ積分に関する研究でも中心的役割を演じる(そこでは2次元や3次元のトーリック多様体に対して局所化計算を行う).局所化計算に現れるグラフ展開は今後この研究を進めて行く上で必要不可欠な道具になるはずである. これらと平行して,これまで考察してきたKP階層・戸田階層とは別種の可積分階層にも取り組みたい.一つはカッツ・脇本階層と呼ばれる可積分階層である.これはアフィンリー代数の表現から構成される可積分階層で,特異点理論やFJRW理論と呼ばれる位相的場の理論に登場することが知られている.もう一つはB型やC型のKP階層である.最近これらの可積分階層が直交多項式系の観点から注目を集めているが,フルヴィッツ数やグロモフ・ウィッテン不変量との関わりも以前から知られている.これらの研究では連携研究者の中屋敷厚氏や池田岳氏の協力を仰ぎたい.
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Causes of Carryover |
敢えて微調整をしなかった結果生じた残額であり,そのまま次年度の助成金と合わせて使用する予定である.
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Research Products
(6 results)