2021 Fiscal Year Research-status Report
Integrable hierarchies related to Gromov-Witten invariants
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18K03350
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
高崎 金久 近畿大学, 理工学部, 教授 (40171433)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 格子KdV階層 / 対数的時間発展 / 格子KP階層 / 戸田階層 / 行列模型 / フルヴィッツ数 / ホッジ積分 / グロモフ-ウィッテン不変量 |
Outline of Annual Research Achievements |
本計画の前半ではリーマン球面のグロモフ-ウィッテン不変量やフルヴィッツ数,ホッジ積分などの母函数の背後にさまざまな可積分構造を見出した.他方,本研究とは異なる観点からも同様の可積分構造のさまざまな研究が行われている.今年度はそれらとの関係をいくつかの場合に考察した. その一つとして,A. BuryakとP. Rossiが2018年に代数曲線のモジュライ空間のr-スピン理論に関して行った可積分構造の研究を取り上げた.BuryakとRossiはそこで格子KdV階層(離散KdV階層)の拡張を提案したが,その構成はあまり具体的ではなかった.本研究では,ラックス形式による明確な定式化を与えることができた.その結果として,この可積分階層は戸田階層の対数的時間発展による拡張の類似物であることが明らかになった. また,A. Alexandrovが近年行っている行列模型やホッジ積分の可積分構造についても検討した.代数曲線のモジュライ空間の交叉理論の行列模型としてコンツェヴィッチ模型が知られている.Alexandrovはそれからハイゼンベルグ-ヴィラソロ群によってホッジ積分の母函数を生成する方法を開発し,KP階層の解として捉えている.本研究ではこの方法を格子KP階層や2次元戸田階層の枠組みで見直して,新たな知見を得ることをめざしている.そこには超幾何型τ函数と呼ばれるクラスのτ函数も視野に入っている.この研究は現在進行中であり,部分的な成果が得られている. これらと平行して,ギヴェンタール理論の解読も進めている.今年度はP. Dunin-arkowskiらの10年ほど前の論文の検討を行った.この論文では局所化公式とグラフ展開に基づいてグロモフ-ウィッテン不変量の母函数のボゾン作用素表示を説明しているが,まだ技術的な細目を消化し切れていない.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
おもな理由は昨年同様,新型コロナウィルスの感染拡大に伴う研究活動の停滞である.当初は予算の大半を国内・国外の研究会への参加のための旅費に使う予定だったが,それができなくなった.また,ギヴェンタール理論は当初の予想以上に難解な内容をもち,要求される知識や技術の水準も高く,新たに学ばなければならないことがきわめて多い.現在はまだその消化段階にある.
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Strategy for Future Research Activity |
1年間の期間延長を申請して認められたので,A. Alexandrovの近年の研究を参考にしながら,ホッジ積分や超幾何型τ函数の可積分構造の研究をさらに進めて,新たな知見を得ることをめざす.また,リーマン球面の同変グロモフ-ウィッテン不変量の可積分構造に関する一昨年の研究を見直して,そこで導入した作用素のより具体的な表示をめざす.これらの問題は相互に密接に関連していて,新たな発見が十分に期待できる.
ギヴェンタール理論に関しては,最近,AlexandrovがKP階層におけるハイゼンベルグ-ヴィラソロ群の取り扱いを拡張する形でギヴェンタール群を扱っている.Alexandrovはギヴェンタール群の作用を従来の文献よりも見通しのよいやり方で記述していて,大いに参考になる.それを参考にして全種数グロモフ-ウィッテン不変量のボゾン作用素表示に対するより深い理解をめざす.B. DubrovinとY. Zhangはグロモフ-ウィッテン不変量の可積分構造をハミルトン形式で定式化したが,ボゾン作用素形式はτ函数の概念の拡張であり,広田方程式の観点でさらに追求する必要がある.また,G. Carlet, J. van de Leur, H. Postuma, S. Shadrinが10年ほど前に行ったラックス表示の試みなども見直してみたい.
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Causes of Carryover |
おもな理由は昨年同様,新型コロナウィルスの感染拡大に伴う研究活動の停滞である.当初は予算の大半を国内・国外の研究会への参加のための旅費に使う予定だったが,それができなくなった.旅費に支出できなかった基金の未使用分は旅費以外の項目,特に,雑誌論文のオープンアクセス化に支出したい.
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Research Products
(2 results)