2018 Fiscal Year Research-status Report
膨張宇宙モデルにおけるスケール因子が非線形波動に及ぼす影響について
Project/Area Number |
18K03351
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
津田谷 公利 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (60250411)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 波動方程式 / 時間大域解存在 / 爆発解 / 解の存在時間 / スケール因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
標準宇宙モデルとして知られているフリードマン・ロバートソン・ウォーカー時空における非線形波動について考察する.フリードマン・ロバートソン・ウォーカー時空の計量は一般相対性理論に登場するアインシュタイン方程式の厳密解の一つで,一様等方的な物質分布のもとで膨張または収縮する宇宙モデルを表す.本研究の目的は (i) 解の時間減衰・挙動 (ii) 時間大域解の最良存在条件 (iii)爆発解の存在時間の評価 を明らかにし,さらに平坦な時空であるミンコフスキー空間の場合での既知の結果と比較することによって,宇宙膨張速度を表すスケール因子が非線形波動に及ぼす影響を解明することである. 本年度は非線形項が未知関数の冪乗であるタイプの波動方程式について研究した.まず,ある特定の条件のもとで時間大域解の存在結果が得られた.解の爆発についての研究はより進んだ.当初得られた爆発条件は狭いものであったが,改良を重ねて条件を広げていき,解の時間大域的存在と爆発の境目である臨界条件を割り出すことができた.劣臨界条件のもとで解の爆発および解の存在時間の評価を示すことに成功した.関連した方程式の既存の結果と照らし合わせると,この評価は最良であると考えられる.爆発条件および解の存在時間の評価にはスケール因子が含まれているため,容易に既存の結果と比較できる.明らかになった点は,このフリードマン・ロバートソン・ウォーカー時空とよばれる一様等方宇宙モデルでは,ミンコフスキー空間の場合と比べて解の爆発が起こりやすいということである.膨張宇宙を背景とする非線形波動であるから,これは妥当な結果であるといえる. また,証明では,解の爆発を示すのにこれまで頻繁に用いられてきたある補題の拡張に成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
時間大域解存在についてはまだ十分な結果が得られていないが,爆発解に関しては予想よりも早く良い結果が得られたことが主な理由である.具体的には,(i)解の時間大域的存在と爆発を分ける臨界条件の見通しがついたこと,(ii)劣臨界条件のもとで解の爆発および解の存在時間の評価を示す結果が得られたこと,(iii)関連した方程式の既存の結果と照らし合わせて(ii)の条件および存在時間の評価は最良であると考えられること,が挙げられる. また,爆発を証明するにあたり,これまで頻繁に用いられてきたある補題の改良,拡張に成功したことも理由として挙げることができる.方程式の変換を行う必要がなくなったため,従来の証明よりも多少簡潔化されたといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
これまで研究してきた,非線形項が未知関数の冪乗であるタイプの波動方程式については次のように進めていく.臨界条件のもとでは,関連した方程式の結果から解の爆発が起こることが予想されるので,臨界条件における爆発をまず示すことが最初の課題である.また,これまでに得られた結果は,空間の膨張速度を表すスケール因子がある値より小さい場合を扱っている.スケール因子がその値に等しい場合が残っているため,この問題も解決する. これと並行して,時空評価式を参考にして,時間大域的存在を示す方法を開発する.未知関数の導関数のみからできているタイプの二次の非線形項についても考察を開始する.
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