2019 Fiscal Year Research-status Report
特異性を伴う混合型非線形楕円型境界値問題における非自明解集合の大域的構造の研究
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18K03353
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
梅津 健一郎 茨城大学, 教育学部, 教授 (00295453)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 非線形楕円型偏微分方程式 / 劣線形 / 正値解の厳密な個数 / 正値解集合 / ロバン境界条件 / 線形化第2固有値 / 非線型関数解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度も前年度に引き続き,sublinear(concave)非線形性と符号不定な重み関数をもつ非線形楕円型方程式をロバン境界条件のもとで考察して,ロバンパラメータの変化にしたがって正値解の解構造を研究した.本研究は Uriel Kaufmann(Universidad Nacional de Cordoba), Humberto Ramos Quoirin(Universidad de Santiago de Chile)との国際共同研究である. 流入型を表すパラメータ値に対しては,前年度の研究成果において正値解の低多重性が得られ,正値解集合が劣臨界な折り返し点をもち,折り返し点を表す臨界パラメータ値を超えると(優臨界値においては)正値解が存在しないことが示された.得られた成果の中で,パラメータ値が十分に小さいときにちょうど2つの正値解をもつことはsublinear型における特徴的な現象であった. 本年度は正値解の構造の解明をさらに精密に推し進めた.まず小さいパラメータ値でちょうど2つの正値解をもつという事実と折り返し点の存在を組み合わせることにより,優解劣解に基づく正値解の比較原理を確立した.そこでは,正値解の安定性の議論を援用した.その結果,最小正値解の存在を示すことができ,また最小正値解はパラメータの変化にしたがって折り返し点に向かって大域的に滑らかな曲線として与えられることを示した.加えて,陰関数定理を援用して,折り返し点を表す正値解を除いては,最小正値解は漸近安定であり,かつ弱安定な正値解は最小正値解に限ることを示した.さらに,方程式の正則化に基づくノンスタンダードな分岐理論を駆使して最小正値解を伴う正値解の連結成分(component)の存在を示し,正値解集合の大域的構造を明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
得られた成果を論文にまとめて数学の国際総合学術誌に投稿した.2019年7月にオランダ,ライデン大学にて開催された国際会議 Equadiff2019 においてcontributed talk の機会を得て成果発表を行った. また,課題番号15K04945(研究代表者 梅津健一郎)の成果,および本研究課題におけるこれまでの成果が認められ,国際学術誌から招待論文の執筆を依頼された.これまでの成果をまとめて review article(表題「Past and recent contributions to indefinite sublinear elliptic problems」)を提出した(査読ののち,2020年秋発刊予定). そして,今年度の最も大きな成果として,方程式に内包する符号不定な重み関数をある臨界状況に近づけたとき,かつ/または方程式が概ね線形に近いとき,正値解の厳密な多重性をパラメータに関して「大域的に」示した.すなわち,折り返し点を除き(折り返し点では正値解の一意性が成り立つ),正値解が存在するならばちょうど2つ存在することを示し,正値解集合はパラメータの変化にしたがって劣臨界な折り返し点をもつ滑らかな解曲線で与えられることを証明した.実際,考える状況下において,正値解に付随する線形化固有値問題の第2固有値の符号が正であることを導き,(折り返し点を除く)すべての正値解で陰関数定理が適用範囲内であることを示した.この実証のためには第2固有値の変分的特徴付けを用いるが,前年度に導いた,臨界パラメータ値の重み関数を用いた特徴付けが有用な道具として効いた.sublinear型の方程式において正値解の多重性を大域的に厳密に与えた結果はこれまで見られず,この方面では非常に意義深い成果である.
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Strategy for Future Research Activity |
べき乗型sublinear方程式の,べきをパラメータとして考える分岐問題において,重要な未解決問題はディリシレ境界条件の場合にある.ノイマン,ロバンタイプの境界条件の場合,正値解は領域の境界までこめて正値であるが,ディリシレの場合は境界において 0 を値にもつため,未知関数に関する線形化方程式は境界付近で特異性をもつ.この困難さを克服し,ノイマンの場合と同様の議論を展開するには方程式に内包する重み関数にある種の付加条件,decay条件を境界近傍に課す必要がある.つまり,ディリシレの場合はこのdecay条件を外すとノイマンの場合の結果がパラレルにしたがわないのだが,これが分岐が起こる可能性に関して除去可能であるかはまだわからない.我々が展開した議論は方程式を未知関数に関して微分することに基づくが,微分操作を回避して連続性のみで行える方策を模索する. ロバン境界条件のもとでの大きな懸案として,正値解とならない非自明非負解の存在の研究がある.sublinear型の場合は一般に強最大値の原理が適用範囲外であるため,正値解のクラスは真に非自明非負解のそれに含まれる.我々のこれまでの研究では正値解の存在を考察の対象としている.そのため,より広い,dead coreをもつ解を含む非自明非負解のクラスの解析が重要な研究課題となる.この課題に内在する困難さを克服するためには解の下からのより精密な評価を確立しなければならない.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの蔓延の中,感染予防のため成果発表の国内出張を3月に取りやめた.2020年度に改めて成果発表のための旅費に充てる.
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Research Products
(8 results)