2022 Fiscal Year Research-status Report
特異性を伴う混合型非線形楕円型境界値問題における非自明解集合の大域的構造の研究
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18K03353
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
梅津 健一郎 茨城大学, 教育学部, 教授 (00295453)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 非線形楕円型境界値問題 / 特異性を伴う劣線形項 / concave-convex / 非自明非負解 / アプリオリ評価 / 大域的解構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
沿岸漁業収穫をモデル化した非線形境界条件のもとで,領域内部の魚量がヴェアフルストモデルによるロジスティック方程式に従っている。非線形境界条件を用いたモデル化は D. Grass, H. Uecker, T. Upmann(Optimal fishery with coastal catch, Nat. Resour. Model. 32 (2019), e12235, 32 pp) によって提唱された。このとき,収穫努力を表す正値パラメータを設定して,その変化に依存した非自明非負解(以下,解)の振る舞いを考察した。 領域の大きさに依存するディリシレ固有値問題の第一固有値に従って 2 つの場合を考察する。領域が比較的大きい場合は非自明非負解集合(以下,解集合)は単純である。パラメータに関する解の大域的存在が成り立つ。また解の一意性が期待される。他方,比較的小さい場合には,解の存在と非存在を与えるパラメータレンジの存在を伴ってそれは複雑である。また解の多重性が成り立つパラメータレンジが存在し,パラメータに関して解集合が折り返し点を持つ。 本研究課題の今年度の目的は,その2つの場合を分ける臨界状況に深く切り込んで,解集合の定性的振る舞いを十分に理解することである。非線形性を与える関数について,そこに現れる2つの指数の相互作用が解集合の出現に及ぼす影響を研究した。解が存在するためのパラメータレンジを上から評価することに成功し,解集合の振る舞いをある意味制御することができた。これにより解集合の特徴付けに道筋をつけた。臨界状況においては非臨界の場合に取られた手法の多くが適用できない。変分解析及び分岐解析の手法において臨界版の開発が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非線形境界条件で記述される沿岸漁業収穫モデルは吸収効果(absorption)を持つと同時にconvex型非線形項からなる。他方,領域内部で定式化されるロジスティック非線形項が concave 型であることから,研究対象の境界値問題は concave-convex 混合型非線形性を備える。領域が比較的大きいとき(呼応するディリシレ固有値問題の第1固有値が比較的小さい場合),どんなに大きな収穫努力のもとでも安定解が存在することが示された。他方,領域が比較的小さいとき,十分大きな収穫努力のもとでは解の非存在が示され,小さな収穫努力のもとでは解の多重性が示された(そのひとつは安定である)。後者の場合.リアプノフ安定性に基づく考察からゼロ解は安定であることが示唆され,いわゆるアリー効果が期待される。東北大学応用数理解析セミナーにおいて成果発表を行った(令和4年6月9日)。 このようにドラスティックに変化する2つの場合の研究に基づき,その臨界状況において考察を進めることは非常に興味深く応用上意義深い。非線形理論の優解劣解を構成する方法及びエネルギー法を駆使し,さらに固有関数を用いた関数空間の直交分解を援用し,臨界状況における解集合の考察を進めて非臨界状況における結果を補完した。現在得られた研究成果は論文にまとめられ,国際学術専門誌に投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き沿岸漁業収穫モデルを考察して臨界状況における研究を進める。解の大域的分岐の考察が不十分である。ゼロ解からの解の分岐を考える際に,ゼロ解のまわりで特異性を持つという問題の困難さがある。その困難さを克服するために問題の正則化が有効であると思われる。しかしながら,現状では正則化問題の解集合に対する極限操作において期待される結果が導けない。解の多重性及び解集合のパラメータに関する大域的振る舞いといった期待される結果をどのように解明するかが今後の課題である。 また,前年度からの課題として,解の安定性の考察が不十分である。特にゼロ解のまわりにおいて特異性がなす解析の困難さがあり,それを克服する手法が未だ開発されていない。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため,研究成果発表を目的とした国内出張,外国出張を十分に行うことができなかった。そのため,予定していた旅費を執行することができなかった。令和5年度において,本研究課題の成果発表として,国際会議AIMS2023(Americal Institute of Mathematical Sciences主催,ウィルミントン,米国,5月31日から6月4日まで)に出席してスペシャルセッションにて口頭発表を行う。そのための外国旅費に使用する。
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Research Products
(5 results)