2018 Fiscal Year Research-status Report
On the structure and the bifurcation of non-hyperbolic attracting regions: theory and numerics
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18K03357
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
篠原 克寿 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 准教授 (50740429)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 非双曲型力学系 / 異次元ヘテロクリニックサイクル |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,主に研究全体に関する準備的な作業を進めた.関連する文献整理を行い,過去の研究において非双曲型吸引領域の力学系においてどのような問題意識が存在するのかについて,整理を行った.2018年11月には中国武漢の Huazhong University of Science and Technology にて関連分野の研究者とワークショップを開催し,研究打ち合わせを行い,ランダム力学系やエルゴード理論の観点から本研究主題に関する重要な問題について討議を行った. 非双曲型力学系の可視化に関する論文が学術雑誌 Nonlinearity に掲載された.この論文では,非双曲型力学系のうち部分双曲型力学系と呼ばれるものの発生において重要な役割を果たすブレンダーと呼ばれる構造に関して,その発生を数値的に検出する方法について提案を行ったものである.また,具体的な系で発生するブレンダーを実際に3次元空間内に描出した.結果としてブレンダーを直感的に理解することが容易になった. 力学系の研究集会で講演を行い,非双曲型力学系における周期点の増大度に関するこれまでの自身の研究成果について周知を図った.より具体的には,部分双曲型力学系において周期点の増大度を決定する要素として,力学系を考えるときに力学系の空間に導入する位相が重要であることと,高次の微分の情報(アファイン不変量やシュワルツ微分)が重要であることを示唆する研究結果について講演を行った.(講演・全4回、2018年6月:中国・深セン、8月ブラジル・サルバドール、12月中国・北京、2019年1月:日本・軽井沢)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
18年度の研究に関してはおおむね順調に進んでいると評価している.関係する研究者との議論により,本研究課題の今後の研究方針に関して筋道が立ってきたためである. 具体的には,(1)18年度に受理された論文で議論されていた,ブレンダーと呼ばれる構造に関して,当該論文で行った研究の発展として,中心方向の力学系を修正し,指数の異なる固定点が現れるようなものにし,それを数値的に解析することの重要性が分かった.そうすることで,非双曲型力学系の構造や分岐に関して様々な知見が得られるであろうと期待される.このことは18年度に武漢で行ったワークショップや,19年3月に関連する共同研究者らと行った議論においても明らかになった.(2)同じく,武漢で行った研究打ち合わせで,次の重要な論点が発見された.具体的には,非双曲型力学系の分岐に関して,これまで周期点の増大度の研究がよく行われているが,技術的な問題で,このような問題を考えるうえで周期点の増大度というのは下極限を考えることが多かった.今回の討議において,上極限を考えることでもこれまでの手法を用いることでアプローチが可能であるのではないか,ということが分かってきた.それにはこれまで整備してきた分岐の解析手法をより洗練して適用することが重要であり,その準備的な議論も行うことができた.(3)18年度より行っている野生的力学系と呼ばれる型の力学系の分岐現象に関して,証明について見通しが立ってきており,18年度後半から論文の準備を始めている.この執筆に関してもある程度進捗があり,研究期間内に一定の成果として結実することが期待される.
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Strategy for Future Research Activity |
19年度は18年度に得られた知見を基にして研究を続けていく予定である.具体的には(1)ブレンダーと呼ばれる構造に関して,これまで研究を行ってきた "Henon-like family" にこれまでの摂動に加えて中心方向に指数が変わるような修正を加えたものを作成し,その分岐を18年度までに得られた数値解析技術を用いてニュージーランドの University of Auckland の研究者らとの共同研究で解析を行う.19年度内に可視化を行い,分岐を視覚的にとらえられるようにすることが目標である.(2)非双曲型力学系のうち部分双曲型力学系と呼ばれるクラスの力学系の周期点の増大度に関して,これまで下極限に関する研究が多かったが,精密な状況設定と詳細な解析を行うことにより,上極限に関する指数関数的増大性を研究する.(3)野生的力学系の分岐に関する研究については,これまでの反復関数系の摂動技術を用いることにより,具体的な系における野生性の証明を行う.証明の要点である,写像の空間における有界性定理に関する証明の記述と,それを適用する手順を具体的に論文の形にするのが目標である.この研究はフランスの Universite de Bourgogne との共同研究として進める予定である. また,19年5月にフランスマルセイユで開催される力学系の研究集会 "Dynamics Beyond Uniform Hyperbolicity 2019" に参加し,力学系理論の最新の研究成果に関して情報収集を行う予定である.合わせて国内外の研究集会に参加し,これまで得られた研究成果に関する周知や関連研究者との議論を進めていく予定である.
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は大きく分けて二つある.ひとつは開催を予定していたワークショップが他との関連において開催されなくなったこと,もうひとつは当初計画していた出張を次年度に行うことになったことである. 第一の理由に関しては,当初予定では18年度に全体の研究方針を整理するために,関連する研究者を勤務先の大学に招へいしワークショップを行う予定であったが,当初招へい予定の一部の参加者が中国武漢にて一堂に会する機会を得たため,場所を変更しワークショップを開催することとなった.また,当初招へい予定であった別のグループの研究者とは今回の研究に関連する研究集会で対面する機会があり,その際に研究打ち合わせを行うことができた.結果として旅費などの支出が不要となり,次年度使用額が生じることとなった. 第二の理由に関しては,当初は研究推進のために共同研究者の勤務先であるフランスの Universite de Bourgogne を訪問する予定であったが,研究代表者と訪問先の都合が合わず,この出張を19年度以降に実施することとなった.結果として次年度使用額が発生することとなった. なお,次年度使用額に関しては,ワークショップに関しては本年度行う研究打ち合わせ費用として使用し,フランス出張については19年度以降の適当な時期に実施をする予定である.
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Research Products
(6 results)