2019 Fiscal Year Research-status Report
On the structure and the bifurcation of non-hyperbolic attracting regions: theory and numerics
Project/Area Number |
18K03357
|
Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
篠原 克寿 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 准教授 (50740429)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 非双曲型力学系 / 異次元ヘテロクリニックサイクル |
Outline of Annual Research Achievements |
平成31--令和元年度の進捗は3点にまとめられる. 1.ブレンダーの数値計算について,ブレンダーと呼ばれる力学系的対象に対して,その直感的理解を容易にするためブレンダーに関連する様々な量の数値的研究を進めている.この計算結果に関してある程度まとまったので,その結果を論文にして現在投稿中である.この論文ではブレンダーの各点における不安定方向を線分片として具体的に表示をしたり,またブレンダーを有する力学系のパラメータを動かしながらその不変多様体を描画することにより,ブレンダーが持っているギャップがどのように発生するのかを調べた. 2.部分双曲型力学系の周期点の増大度について.昨年度部分双曲型力学系に対して,高い正則性の下で通有的な超指数的増大度の発生に関する論文をまとめ投稿した.この論文の査読が現在進んでいる.査読中にレフェリーから,関連する現象について論文により具体的な記述がなされるべきである,との指摘を受け,投稿論文に記述の追加を行った.具体的には,頑強に推移的な強部分双曲型力学系に対して,中心方向が1次元であり,中心方向の向きが力学系の作用で保たれていれば,その力学系が低い正則性の位相の下で超指数的増大度を持つなめらかな力学系で近似可能であることを証明した.この事実は「頑強に推移的な強部分双曲型力学系」というかなり広いクラスの非双曲型力学系において超指数的増大が観測されることを示しており,大変興味深い. 3.野生的力学系の分岐について.中心方向の次元が高い非双曲型力学系に対してどのような野生性の発生の可能性があるかについての研究を進めている.平成31--令和元年度は野生性発生のメカニズムの鍵となる,反復関数系において摂動により不変曲線を発生させる命題に対して厳密な証明を与える論文の執筆を行った.すでに原稿自体は準備ができており,近いうちに論文の投稿を行う予定である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は1.数値計算による部分双曲型力学系の直感的理解の促進,2.非双曲型力学系の超指数増大度の発生,3.野生的力学系の分岐理論,という3点を柱にしている.3つすべての点について,研究は順調に進展している.それぞれについてより詳しく述べる. 1.ブレンダーの数値計算については,ブレンダーのギャップが不変多様体の長さを延長するにつれてどのように変化するか,ということを観察することにより数値計算的にブレンダーをとらえるという方法論が徐々に確立されつつある.これらの結果を用いて,来年度は本格的な非双曲型力学系の数値解析が行える予定である.これが本研究課題の当初からの目標であり,これまでの準備をもとに順調にゴールに向かっている.この点から,これまでの研究は順調に進んでいるといえるだろう. 2.の研究に関しては,当初目標であった結果の論文投稿が終わっているので,ある程度完了の見通しが立っている.ただ当該研究課題の進行中に,指数増大度の下限に加えて上限の研究を行うなど,これまでの話題と関連させていくつか興味深い新しい研究方針も見えてきており,来年度以降も当該研究課題の深化が行える予定である.問題を解決したことにより,当初の問題意識に対する新しいアプローチが得られたという点で,この研究主題については当初以上に研究が進展しているといえるだろう. 3.野生的力学系の分岐に関して.困難であった技術的命題の証明が終わっていて,原稿の整備が予定と比べると遅れているものの,当初予定通りに進行している.令和2年度以降,共同研究者との打ち合わせをより密にし,これまでの結果を学術雑誌に掲載させることを目指す.原稿準備は遅れているものの,最終目的であった野生的力学系のより病的な側面に関する結果を得られる見通しはある程度は立っているので,その意味でこの研究テーマについても研究は順当に進んでいるといえる.
|
Strategy for Future Research Activity |
令和2年度の研究は主に3点に論点を絞って研究を進める予定である. 1.ブレンダーの数値計算について.平成31年度--令和元年度の研究成果により,ブレンダーの数値計算スキームに関してある程度の知見が得られてきた.令和2年度は,これまでの技術を応用して,異次元ヘテロクリニックサイクルは発生している力学系の数値計算に取り組む予定である.このような力学系の数値的解析は過去に先例があまりなく,うまくいくのであれば大変興味深い.具体的にはこれまで研究してきたブレンダーを持つ歪積力学系にパラメータを導入し,分岐を起こす力学系を構成し,この不変多様体の振る舞いをこれまでの技術を応用して計算する予定である. 2.超指数的増大度を持つ力学系の研究について.これまでの研究では非双曲型力学系において超指数的増大度を持つ力学系があることが証明されているが,この場合の増大度は上限(supremum)の極限として定義がされている.一方で,下限についての極限とした場合に同様な問題がどうなるかというのは興味深い.これまでの計算結果を参考にすると,下限の場合にも自然な仮定の下で同様な結果が証明できる場合があるということがわかってきた.令和2年度ではこのような系に対して実際に下限の超指数的増大が起こるかどうかについて検討を行う. 3.野生的力学系の分岐について.まずは令和元年度までに準備を行った原稿を整理して,これを学術雑誌に投稿する.次に,これまでの技術的な命題の結果として,当初の目標であった野生的力学系の様々な病的な振る舞いに関する研究を行う.具体的には,これまでに得られた技術的命題を使い,周期点を持たない鎖回帰集合で極小的であるものや,一意エルゴード的でないものが通有的に発生する,という結果を証明するのが目標である.なお,令和2年度に研究遂行を推進するためフランスへの長期出張を予定している.
|
Causes of Carryover |
平成31--令和元年度について次年度使用額が生じた理由として次の3点があげられる. (1)令和2年度に長期のフランス出張の予定(ブルゴーニュ大学,令和2年9月より,終了時期は未定)が入り,助成金をこちらの出張に使用するほうが研究遂行の観点からみて妥当だと判断されたため.なおこの出張で研究課題のうち,「野生的力学系の分岐」に関する研究を遂行する予定である.(2)令和2年3月に,助成金を用いて開催しようとしていたワークショップ(共同研究者の D, Turaev, Imperial College London らとともに一橋大学で開催予定であった.非双曲型力学系に関する周期点の増大度に関する研究と分岐理論との関係を議論する内容を予定していた)が,コロナウィルス感染拡大対策による理由で,相手側が日本に来ることができず,開催できなかったため.(3)令和2年3月に開催予定であった研究集会(北見工業大学で開催予定であった「力学系の新展開」)が都合によりキャンセルになったため. 令和2年度には次年度使用額を次のように使用する予定である:令和2年9月から長期のフランス出張(ブルゴーニュ大学)を行う予定である.この出張では野生的力学系の分岐に関する研究の論文執筆の議論を行う予定である.この際の旅費として今年度の未使用分を使用する予定である.
|
Research Products
(3 results)