2021 Fiscal Year Research-status Report
Mathematical study of the Feynman path integrals and its application to quantum electro dynamic and quantum information theory
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18K03361
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
一ノ瀬 弥 信州大学, 理学部, 特任教授 (80144690)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 制限Feynman経路積分 / 量子連続測定 / スピン成分 / Pauli方程式 / Neumannの射影公理 / Feynmanの公理 / 2重スリット実験 / Aharonov-Bohm効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者の研究課題の目的は、Feynman経路積分の数学的研究と、その量子電磁力学・量子情報理論への応用である。量子計算など、量子情報の読み取りは量子測定(観測)によって行われる。この理由で、量子測定理論は量子情報理論の中でも特に重要である。特に連続測定理論は、測定が有限時間続くという意味で現実的なものであり、工学に応用される。令和3年度において、粒子の位置の量子連続測定理論についての研究から、以下の5つの研究成果を得た。 (1)粒子の位置の連続的な量子測定に関して、Feynman経路積分による定式化(制限Feynman経路積分)の数学的意味付けを行なった (Osaka J. Math.に2022年に掲載予定)。(2)Feynmanの公理からMenskyは制限経路積分を提案したが、その導入方法は現象論的であり論理的でなかった。本研究では、Neumannの射影公理とFeynmanの公理の各々から、自然に制限Feynman経路積分が導出されることを示した(2021年の作用素論セミナーで発表)(3)制限Feynman経路積分を用いて、2重スリット実験とAharonov-Bohm効果に関する実験についての理論の正確な定式化を行った。(4)擬微分作用素のL^2有界性に関するZowrskiの結果(2012年)を、行列型の結果に拡張した。(5)上記(4)の拡張したZowrskiの結果を用いて、次の結果を得た。各スピン成分の位置の連続的な量子測定に関する制限Feynman経路積分について、上記(1)のOsaka J. Math.の結果を物理的に重要な例を含むように一般化した。 現在、上記(2)から(5)の研究成果を発表するため、現在論文を執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
交付申請書では、令和3年度の実施計画は、Feynman propagatorの経路積分表示の構成など量子電磁気学(場の理論)の研究を行うことであった。しかし、以下の理由から研究に遅れが生じている。 (1)量子連続測定理論の研究においては、擬微分作用素のL^2有界性に関するZowrskiの結果が重要な役割を果たしている。しかし、各スピン成分の位置の連続的な量子測定に関する制限Feynman経路積分に、従来の結果を応用するのでは、十分な結果が得られなかった。このため、Zowrskiの結果を拡張する必要が生じた。この研究を行ったことで、研究に遅れが生じた。 (2)Feynmanの公理からMenskyは制限経路積分を提案したが、その導入方法は現象論的であり論理的でなかった。報告者は研究の過程で、Neumannの射影公理とFeynmanの公理の各々から、自然に制限Feynman経路積分が導出されるアイデアを得た。この導出の方法は、量子連続測定理論の基礎付けにおいて重要であると判断した。そのため、この導出のアイデアを明確にするための研究を優先した。この理由で、本研究課題の研究に遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度においては、位相空間Feynman経路積分を直接的に解析する方法を見出し、この方法を用いて、スピンー軌道相互作用項を持つPauli方程式に対するFeynman経路積分を定式化する。Pauli方程式に対するFeynman経路積分の研究とDirac方程式に対する位相空間Feynman経路積分の申請者の研究(2007,2018)から、この定式化は可能と考える。 この研究に引き続いて、運動量の量子連続測定を記述する制限Feynman経路積分の厳密な定式化の研究を行う。
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Causes of Carryover |
コロナウィルスの蔓延のため、国際・国内学会が中止され、又他の研究者との交流も中止せざるを得なくなった。この理由で旅費を使用できなかったため、次年度使用額が生じた。コロナウィルスの蔓延が収まり、国際・国内研究集会が開催されば、研究会に積極的に参加し、研究課題達成のために努力したい。 研究費の使用として、リモート研究集会参加のためのOA機器の整備、研究に関する図書の購入と国内旅費に充てる。
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