2019 Fiscal Year Research-status Report
準線形楕円型偏微分方程式の解構造への変分的アプローチ
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18K03362
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
足達 慎二 静岡大学, 工学部, 教授 (40339685)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴田 将敬 東京工業大学, 理学院, 助教 (90359688)
渡辺 達也 京都産業大学, 理学部, 教授 (60549749)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 準線形楕円型偏微分方程式 / 漸近解析 / 正値解 / 一意性 |
Outline of Annual Research Achievements |
未知関数のべき乗に対するラプラシアンを含む準線形楕円型偏微分方程式に関する研究を推進した。方程式の解構造(一意性・多重性・漸近挙動)の解明が研究目的である。本年度は準線形項にかかる係数をパラメータとみなし,これを 0 に近づけたときの正値解の漸近挙動について,空間 3 次元,非線形項の増大度が Sobolev 臨界の場合の研究を行った。前年度までの漸近挙動解析により,空間の次元にかかわらず,正値解を適切に自己相似変換したものが Talenti 関数と呼ばれる関数(この関数は Emden-Fowler 方程式の解である)に収束することが示され,漸近的プロファイルはほぼ解明されていた。しかし,空間次元が 4 次元以上の場合はこの収束が部分列に依らずに成立する一方で,空間 3 次元の場合はこの収束が部分列に依らずに成立するかどうかは解明されていなかった。本年度はこの点を重点的に研究し,空間 3 次元においても極限の一意性を示すことに成功し,その結果,正値解を適切に自己相似変換したものが部分列に依らずに Talenti 関数に収束することを示すことができた。空間 3 次元では Talenti 関数は L^2 空間に属さず,この事実がこの問題の難しさの起因となっているが,試験関数の構成方法に修正を加えたことで従来よりも詳細な漸近解析が可能となり,問題を解決することができた。これにより,空間 3 次元においても極限方程式として Emden-Fowler 方程式が現れることが解明された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
準線形楕円型偏微分方程式の正値解の漸近挙動について研究を進め,当初の計画通り漸近挙動についての完全解明に至ったため。また,この結果は論文に纏め,専門誌へ投稿した。
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Strategy for Future Research Activity |
準線形項にかかる係数の符号を変え,正の係数の場合について,正値解の存在,一意性,さらにはその係数をパラメータとみなし,これを 0 に近づけたときの正値解の漸近挙動について研究を進める。準線形項にかかる係数が正の場合,双対アプローチを用いて準線形楕円型偏微分方程式を半線形楕円型偏微分方程式へ書き換える手法を直接的には適用できない。そこで,方程式にもう一つパラメータをおき,このパラメータに制限を課すことで,解のアプリオリ評価を導出して双対アプローチを適用する方針をとるつもりである。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主な理由は新型コロナウイルス感染症拡大の問題を受けて,出張を予定していたいくつかの研究集会が中止や延期になったためである。延期になったものが次年度に開催されるならば,その出張旅費として使用する計画である。また,研究分担者との研究打ち合わせのための旅費としても使用し,研究をさらに推進させるつもりである。
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