2022 Fiscal Year Research-status Report
準線形楕円型偏微分方程式の解構造への変分的アプローチ
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18K03362
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
足達 慎二 静岡大学, 工学部, 教授 (40339685)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴田 将敬 名城大学, 理工学部, 准教授 (90359688)
渡辺 達也 京都産業大学, 理学部, 教授 (60549749)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 半線形楕円型方程式 / 正値解の存在 / 漸近挙動 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は半線形楕円型方程式の正値解の存在とその漸近挙動について研究を行った。特に非線形項に対して無限遠方での増大度条件を全く課さずに原点付近での局所的な優線形性のみを課したシュレディンガー型の半線形楕円型方程式の正値解の存在とその漸近挙動について,変分的アプローチを用いて解析を行った。前年度はこのような半線形楕円型方程式に対して,ポテンシャルに有限群作用に関する不変性を仮定した。一方,今年度は正値解の漸近挙動まで踏み込んだ変分解析を行うために,ポテンシャルに対してトラッピング型の仮定を課し,結果として通常の特異摂動問題とは異なる興味深い漸近挙動を示すことができた。本研究において重要な鍵となるものは正値解のアプリオリ評価である。本研究では群作用不変ポテンシャルの場合について示したような明示的なアプリオリ評価までは得られなかったものの,正値解の上限が方程式に含まれるパラメータに依存して任意に小さくなることを示すことができ,これにより,正値解を適切に自己相似変換した関数の漸近的プロファイルを解明することができた。ここで得られた正値解のアプリオリ評価は準線形楕円型方程式の正値解の構成に繋がり,双対アプローチを直接適用できないタイプの準線形楕円型方程式の変分解析に弾みをつけるものである。また,前年度から研究を続けていた有限群作用不変ポテンシャルの場合についても,可解性に関するより強い結果を得ることができた。特に空間1次元での可解性を初めて示すことできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度に引き続き半線形楕円型方程式に対する研究で大きな成果を得ることができた。一方で,半線形楕円型方程式に対する研究成果を準線形楕円型方程式の研究へ応用することについては基礎計算を通して見通しを立てている最中である。また,コロナ禍でいくつかの研究集会が中止になったことなどにより予算の執行に一部遅れが出たので,補助事業期間延長の申請を行い,一年間の延長が認められた。このようなことを総合的に判断し,現在までの進捗状況はやや遅れているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
プラズマ物理学由来のある種の準線形楕円型方程式に対して,これまでは双対アプローチが直接適用可能となる準線形項にかかる係数が負の場合について研究を進めてきたが,今後は準線形項にかかる係数が正の場合について,正値解の存在,一意性,漸近挙動について研究を進める。特に今年度得られた半線形楕円型方程式に対する研究成果を適用して,双対アプローチが適用可能となるような正値解のアプリオリ評価を得ることができ,これによって可解性を示すことができると考えている。
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Causes of Carryover |
本来ならば補助事業期間は令和5年度までであったが,新型コロナ感染症拡大対策のため,研究打合せのための出張をいくつか取りやめたこと,また,参加予定の研究集会の一部が中止になったりオンラインでの開催になったことなどにより,予算執行に遅れが生じた。このため,補助事業期間の1年間延長を申請し,これが認められたため次年度使用額が生じた。 次年度は最終年度にあたるためこれまでの研究総括のために使用する。
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