2018 Fiscal Year Research-status Report
Challenges to unexplored fields of research on the Cauchy problem for systems of quasi-linear wave equations--large-time behavior and regularity of solutions--
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18K03365
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
肥田野 久二男 三重大学, 教育学部, 教授 (00285090)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | weak null condition / 準線形波動方程式系 / 初期値問題 / 時間大域解 |
Outline of Annual Research Achievements |
weak null conditionと呼ばれる条件をみたす, 空間3次元におけるある準線形波動方程式系に対する初期値問題を考察した. なめらかでコンパクトな台をもつ初期値がある意味で十分に小さいならばこの方程式系は一意時間大域解をもつことは先行結果(``Global existence for a system of quasi-linear wave equations in 3D satisfying the weak null condition'', Kunio Hidano and Kazuyoshi Yokoyama, International Mathematics Research Notices. IMRN (in press))で示されていた. そこでの初期値の小ささに関する条件の与え方を使うとなめらかさの条件を自然な段階にまで弱めたり, コンパクト台という仮定を外したりするのに都合がよくなかった. また, 複数の伝播速度をもつような方程式系を考察したり, 障害物の外部における初期・境界値問題を考察したりするのにも不都合な方法であった. このような理由により, 上述の論文の主定理に別証明をあたえることを行った. 今回の証明で用いられた初期値の小ささに関する条件は, いわゆる軟化子と切り落としの方法と相性が良く, 先行結果で課されていた「なめらかでコンパクト台をもつ」という強すぎた条件を自然な形まで緩めることに成功した. また新証明の意外な副産物として, 初期値が原点に関して球対称であるときは, 空間遠方での減衰に関する条件を一層緩めることが可能であることも明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上述の研究で用いた手法も使って更なる進展も見られた. 具体的には, 2次の非線形項がnull conditionをみたすときの, 空間3次元における準線形波動方程式系に対する初期値問題も研究した. 初期値がある意味で小さいとき, この方程式系は一意時間大域解をもつことがともに1986年にChristodoulouとKlainermanにより別々の方法で示されていた. ただ, 初期値の小ささに関する条件は異なっており, Christodoulouは「重み付きH^4ノルムが小さい」ことを仮定し, Klainermanはかなり高階のノルムが小さいことを仮定していた. Klainermanの方法でも初期値に対する条件をもっと緩めることができるかどうかは自然な問題となる. Ho"rmanderの1997年に出版された本の中では, 「重み付きH^9ノルムが小さい」という条件まで緩められることが証明されている. さらにAlinhacの2010年に出版された本の中では, 非線形項をChristodoulouとKlainermanのものよりも制限すれば, Alinhacのghost weightの方法も援用すると「重み付きH^4ノルムが小さい」という条件までKlainermanの方法で緩められることが証明されている. そこで, 非線形項を制限せずにChristodoulouとKlainermanが扱ったものと同様にした場合に, Klainermanの方法で「重み付きH^4ノルムが小さい」という仮定のもとで時間大域解の存在を示すことが可能かが問題になる. ghost weightによるエネルギー評価式の方法に加えて, 共形エネルギー評価式, 時空L^2型評価式, およびLi-Yuの方法などを組み合わせてこの問題が解決できることがわかり論文に纏めている.
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Strategy for Future Research Activity |
まずは上の欄で述べたことを論文に纏めることに注力する. その後に, 異なる伝播速度のもつような方程式系がweak null conditionをみたすときの時間大域解の存在に関して得られている成果を論文に纏めて発表したい.
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Causes of Carryover |
次年度使用額を研究に必要なレーザープリンタの購入に一部使用する。また, 5月に三重大学で研究集会を開催するので講演者を招待するための旅費にも使用する.
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