2019 Fiscal Year Research-status Report
Challenges to unexplored fields of research on the Cauchy problem for systems of quasi-linear wave equations--large-time behavior and regularity of solutions--
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18K03365
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
肥田野 久二男 三重大学, 教育学部, 教授 (00285090)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 非線形波動方程式 / null condition / global existence |
Outline of Annual Research Achievements |
2次の非線形項がnull conditionをみたし, 一般的な3次の非線形項ももつような, 空間3次元における準線形波動方程式系に対する初期値問題の時間大域解の存在に関する論文をまとめることにかなりの時間を割いた. 初期値がある意味で小さいとき, この方程式系は一意時間大域解をもつことが1986年にChristodoulouとKlainermanにより別々の方法で示されていた. ただ, 初期値の小ささに関する条件は異なっており, Christodoulouは「重み付きH^4ノルムが小さい」ことを仮定し, Klainermanはかなり高階のノルムが小さいことを仮定していた. Klainermanの方法でも初期値に対する条件をもっと緩めることができるかどうかは自然な問題であるが未解決のままであった. Ho"rmanderの1997年に出版された本の中では, 「重み付きH^9ノルムが小さい」という条件まで緩められることが証明されている. さらにAlinhacの2010年に出版された本の中では, 非線形項をChristodoulouとKlainermanのものよりも制限すれば, Alinhacのghost weightの方法も援用すると「重み付きH^4ノルムが小さい」という条件までKlainermanの方法で緩められることが証明されている. そこで, そのような非線形項の制限をせずに, ChristodoulouとKlainermanが扱ったものと同様にした場合に, Klainermanの方法で「重み付きH^4ノルムが小さい」という仮定のもとで時間大域解の存在を示すことが可能かが問題になる. いわゆるローレンツブーストと呼ばれる偏微分作用素などの使用回数を厳しく制限することで, 相当に弱い重みだけがついた初期値のH^4ノルムが小さい仮定のもとで, この問題が解決できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
異なる伝播速度のもつ, 空間3次元における半線形波動方程式系が既知のnull conditionを満たさないときの時間大域解の存在に関して研究を進めた. null conditionを満たさない項が非線形項に含まれるために, 解のsupノルムの減衰オーダーが自由解と比べて遅くなるのがこの方程式系の特徴である. このために, 時間に関して緩やかな増加を許したエネルギー評価すら得ることが困難で, 時間局所解をcontinuity argumentで時間大域的に延長する方法の適用を難しくする. Alinhacのghost weightの方法は, いわゆるローレンツブーストと呼ばれる偏微分作用素を使用するのでスカラーの場合や伝播速度が等しい連立系に適用が制限されてしまう. 幸い, Klainerman-Siderisのアイデアを援用するとローレンツブースト無しでもこの方法は有効なことがDongbing Zha氏の先行論文で分かっていた. そこで, Zha氏と横山和義氏と共同で, ghost weightの方法を今回の問題にも適用して難しさの一つを克服できた. ただ, これだけでは望ましい先験評価を得ることができない. 今回, 重みのついた時空L^2, Keel-Smith-Sogge型評価式をHidano-Yokoyamaのかつての論文などで用いられてきた不等式と組み合わせると, もう一つの難点を克服できることに気が付いた. さらに, ghost weightの方法を空間3次元のときの問題に適用する際には不必要と思われた, 高階と低階の二つのエネルギーを, それぞれの増大度を許して使用する工夫も取り入れるとエネルギー評価が閉じることがわかり, 小さな初期値に対して時間大域解の存在が示された. なお, これは先行するPusateri-Shatahの結果を大幅に改良するものである.
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Strategy for Future Research Activity |
2018、2019年度は空間3次元の場合の問題の研究した. 同様の問題を空間2次元の場合にも考察することには意味がある. 難しい問題ではあるものの, 2次の項がnull conditionを満たし, 3次の項が必ずしもnull conditionを満たさないような場合がまずは現実的に着手可能であろうと思われる. そこから研究を進めていきたい.
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Causes of Carryover |
2020年3月に予定されていた2つの研究会で講演する予定であったが、新型コロナウイルス感染拡大のために、出張を取り止めざるを得なかった。そのために9万円ほどの未使用額が発生した。2020年度は共同研究を目的とした出張の回数は抑えざるを得なかろう。幸い, 和書と洋書で良書が数多く出版されているので, その購入に充てて研究に生かす.
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