2018 Fiscal Year Research-status Report
複素力学系の分岐によるパラメータ空間の構造の研究とその可視化
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18K03367
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
稲生 啓行 京都大学, 理学研究科, 准教授 (00362434)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 複素力学系 / 反正則力学系 / バーチャルリアリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
反正則二次多項式族におけるMandelbrot集合の対応物はtricornと呼ばれる。この族における双曲パラメータ集合の連結成分(双曲成分)で周期が奇数のものは、計算機で描いた絵を見ると、多くはデコレーションが重なり合って集積しており、tricornの外からは到達不可能であるように見える。実際双曲成分の周期が高くなればなる程、その双曲成分の近傍でのtricornの補集合はどんどん「細く」なる。従って十分周期が高い場合には、到達可能であるものは非常に例外的であろうと考えられる。これに関する部分的な結果も既に得られており、現在より強いことを示すべく研究を進めているところであるが、一方で、Chebyshev多項式に収束するある奇数周期の双曲成分の族を考えると、十分Chebyshev多項式に近いものは全て到達可能であることを示すことができた。これはtricornの双曲成分の近傍の位相的性質が様々であることを示す新しい性質であり、複素力学系の複素2次元以上のパラメータ空間の複雑さを示す新しい例であると捉えることができる。 また、複素2次元のフラクタル集合の可視化については、現在バーチャルリアリティ(VR)用のゲームやアプリの開発に広く用いられているゲームエンジンUnityの上で開発している。Pcxという、Unity上で3次元の点群を表示するためのアセットを拡張して、4次元の点群のデータを扱えるようにした。これによって様々な4次元空間内の対象を容易に可視化し、両眼視差や運動視差などを用いた様々な表示方法や操作方法を実装して試すことができるようになった。宇敷重廣氏らによるHenon写像のJulia集合を近似的に計算するプログラムも移植し、リアルタイムに計算して表示ができるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
4次元可視化のためのVRアプリの開発は、ゲームエンジンのUnityの利用によって、これまでのOpenGLとC++で基礎的なことから実装していた時に比べるとずっと容易になり、本質的な部分に集中して開発ができるようになった。これによって4次元の物体を両眼視差や運動視差などを用いてどのように可視化するか、またどのようにすれば直感的な操作が可能になるか、そういった部分の開発・実装を大きくスピードアップできると考えている。フラクタルのような複雑な対象を、構造を理解する為に必要な部分を適切に計算し可視化することは未だ困難であるが、表現方法・操作方法が改善することで、何をどのように可視化するべきかということに対する理解にもつながると考えている。 反正則二次多項式族(tricorn)の奇数周期の双曲成分の到達不可能性に関しては、現在までのところ、特別な種類の族に対して、しかも境界を構成する3つの滑らなか曲線のうち、1つのみが到達不可能である、という非常に限られた結果しか得られていない。しかしながら、今回の到達可能性の証明を到達不可能性について適用できれば、双曲成分全体が到達不可能であるという結果が比較的弱い条件の下で示すことができ、この意味で将来性のある結果だと考えている。 またくりこみ可能なパラメータの具体的な構成についてもいくつか新しいアイディアがあり、それらの詳細を詰めていくことで、新しい結果が示せると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
反正則二次多項式族(tricorn)の到達不可能な双曲成分の存在を示す。今回の到達可能性の議論では、双曲成分の収束先であるMisiurewiczなパラメータのJulia集合が十分「複雑」であれば、双曲成分の到達不可能性が示される。その「複雑」さを厳密に定式化し、それを満たすパラメータの存在を示す。 Mandelbrot集合の自己相似性はよく知られている。自己相似を与える写像はstraighteningと呼ばれ、この逆写像はtuningと呼ばれる。tuningを具体的に構成することは、高次多項式のstraighteningの全射性を調べる上で重要であるが、一般的な構成は知られていない。この一般的な構成法をまず二次多項式に対して与える。高次の多項式に対しても、Riemann写像と擬等角変形に関する技術的な問題が解決することによって一般化できると考えている。 重要な未解決問題であるMandelbrot集合の局所連結性予想は、もし正しければ小Mandelbrot集合たちの減少列の共通部分が常に1点になることを意味している。これが三次多項式では成り立たないことを示す。より正確には、このような共通部分は、与えられた組み合わせで無限回くりこみ可能なパラメータ集合に一致しているので、このようなパラメータが複数存在する組み合わせが存在することを、擬等角手術によって具体的に構成して極限を取ることで示す。 VRによる可視化については、より洗練された表示・操作方法について検討する。特にMukherjee氏とのMisiurewiczなパラメータによる近似に関する結果や、中根-Roeschのstretching rayに関する結果は複素2次元のパラメータ空間の構造に関するものであり、それをVRを用いて目で見て理解できるように表現したい。
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Causes of Carryover |
次年度にトロント大、復旦大、チリカトリック大への海外出張の予定があり、当初予定より多くの旅費が必要となることが予想されたため。
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Research Products
(7 results)