2018 Fiscal Year Research-status Report
消散構造を持つ偏微分方程式系の新たな安定性条件に基づいた体系的研究
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18K03369
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
上田 好寛 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (50534856)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 安定性解析 / 可微分性の損失 / 偏微分方程式論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、気体力学や弾性体力学に起因する微分方程式に関する数学解析を主な目的としており、特に対称双曲型方程式系や双曲ー放物型方程式系など一般の方程式系に関する安定性理論の構築を目指している。その一例となる具体的な物理モデルとして、Euler-Maxwell方程式系・Plate方程式系・TImoshenko方程式系などを取り上げながら、方程式の持つ消散構造から引き出される安定性現象に着目し、研究を行なっている。特に、より物理背景に着目することで、各項が複雑に影響を及ぼしあうような方程式系を考察する際に現れる「可微分性の損失」とよばれる現象について深く解析を行っており、平衡点周りの線形安定性解析に関して研究を進めている。 平成30年度は、主に緩和項を持つ双曲型方程式系の安定性解析に着目し、研究を行なった。本研究課題では、方程式系の係数行列にある条件を仮定することで安定性を示すことが最大の目標であるが、その必要十分条件の導出に成功している。さらに対象の方程式系がこの条件を満たす際に解の詳細な減衰評価を得られるかについて解析を行っており、部分的な結果を導くことにも成功している。 また、今回得られた安定性条件の応用として、弾性体モデルのBresse方程式系に関する考察も進めており、これによりこれまでに知られていない新たな消散構造の発見にも繋がった。一般の方程式系における安定性条件の導出という形で、本研究課題においてひとつの区切りはついたものの、この事実は新たな研究課題を提示している。 上記の研究成果を踏まえて、学会等での研究発表も積極的に行っている。本年度は海外発表2回、招待講演15回を含む研究発表を行っている。また、研究集会の場では様々な意見交換・討論がなされ、今後の進展の大きな指針を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
先述の通り、本年度はこれまでに研究を進めてきた様々な物理モデルの安定性解析を機に統一的な結論を導くことに成功し、「安定性条件」とよばれる、方程式系に課される時間大域解が減衰するための条件の導出を行った。また、この安定性条件の元での消散構造の解明についても研究は進んでおり、非常に順調な進展を見せている。また更に、様々な物理モデルに関する解析も進めており、今後の一般論の構築に向けての準備も順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、先述の弾性体モデルであるBresse方程式系に関する考察も進めており、これによりこれまでに知られていない新たな消散構造の発見にも繋がっている。そこで、Bresse方程式系や類似の物理モデルの解析に着手し、消散構造の解明に取り組み、未だに解明出来ていない現状を捉えることが一つの目標である。また、双曲ー放物型の方程式系の安定性解析にも取り組み、より一般的な連立方程式系の安定性解析に取り組むことも一つの方策である。
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Causes of Carryover |
平成30年度に予定していた研究打ち合わせのための海外渡航が平成31年度に変更になったために、次年度使用額が生じた。また、研究の進展に関しては順調に進んでおり、次年度の研究打ち合わせを通じてより発展した研究遂行を計画している。
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Research Products
(22 results)