2020 Fiscal Year Research-status Report
消散構造を持つ偏微分方程式系の新たな安定性条件に基づいた体系的研究
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18K03369
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
上田 好寛 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (50534856)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 安定性解析 / 可微分性の損失 / 偏微分方程式論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、気体力学や弾性体力学に起因する微分方程式に関する数学解析を主な目的としており、特に対称双曲型方程式系や双曲ー放物型方程式系など一般の方程式系に関する安定性理論の構築を目指している。その一例となる具体的な物理モデルとして、Euler-Maxwell方程式系・Plate方程式系・Timoshenko方程式系などを取り上げながら、方程式の持つ消散構造から引き出される安定性現象に着目し、研究を行なっている。特に、より物理背景に着目することで、各項が複雑に影響を及ぼしあうような方程式系を考察する際に現れる「可微分性の損失」とよばれる現象について深く解析を行っており、平衡点周りの線形安定性解析に関して研究を進めている。 令和2年度は、これまでに得られた安定性条件の応用として、弾性体モデルの一つであるBresse方程式系に関する考察を行なった。自身の研究により、Bresse方程式系はこれまでに知られていない新たな消散構造を持つことが示され、現在もその詳細な構造の解析に着手している。さらに、複雑な消散構造の解析として記憶型の消散項を持つTimoshenko方程式系の安定性解析も行なっており、様々なモデルに対する安定性解析の研究に取り組んでいる。 昨年度は新型コロナウイルス感染症の影響もあり多くの研究集会が延期となったため、学会等での研究発表は1回に留まった。また、昨年度の後半ではオンラインでの研究集会も盛んとなり、自身での国際ワークショプの企画開催も行なった。これらの場では様々な意見交換・討論がなされ、今後の進展の大きな指針を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度は、これまでの研究で導かれた双曲型方程式系における安定性理論を用いた物理モデルの解析に着手した。具体的には、記憶型の消散項を持つ梁の振動モデルの安定性解析や、Bresse方程式などに代表される複雑な消散構造の解析にも取り組んでおり、一定の結果が得られている。また更に、これらの非線形方程式系に対する一般論の構築に向けての準備も順調に進んでおり、今後の具体的な研究方針も明確に計画されている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究として、記憶型消散項に代表される複雑な構造を持つモデルやBresse方程式系に関する考察が進めており、これら研究を通じてこれまでに知られていない新たな消散構造の発見にも繋がっている。したがって、今後の研究の推進方策として、Bresse方程式系や類似の物理モデルの解析に着手することで消散構造の解明に取り組み、未解明の消散構造を捉えることが一つの目標である。また、これまでの線形理論の一般化として、非線形連立方程式系の安定性解析に取り組むことも一つの方策である。
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Causes of Carryover |
令和2年度に予定していたほとんどの研究出張が、新型コロナウイルス感染症の影響によりキャンセルとなったため。
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Research Products
(8 results)