2018 Fiscal Year Research-status Report
Wave equations with variable propagation speed and its application for the global solvability of Kirchhoff equation
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18K03372
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
廣澤 史彦 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (50364732)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 波動方程式 / クライン・ゴルドン方程式 / 変数係数 / キルヒホフ方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、「時間変数に依存する質量項を持つクライン・ゴルドン型方程式の初期値問題におけるエネルギーの漸近安定性(1)」と、(1)の解析で用いたテクニックを応用した「伝播速度が時間変数に依存する波動方程式の初期値問題の解のエネルギー評価に関する研究(2)」を主に行った。これら双曲型方程式における時間変数係数が、解の挙動に様々な影響を与えることは知られているが、本研究ではより具体的に、係数の関数としてのどのような性質が、解のどのような性質にどの程度の影響を与えるのかを明らかにすることを目標としている。当該年度の研究では、特に変数係数二階常微分方程式の解の具体的な表現を用いて、従来の方法では精密な解析が難しい低周波領域における評価を試みた。これによって、従来のエネルギー法的なアプローチでは困難な係数の振動による「打ち消し合い」の効果を、係数そのものではなく係数の積分、さらにその積分で表される関数のオーダーによって規定される新たな関数の特性を導入することによって取り出すことが可能となり、その結果として(1)(2)に関する解の低周波領域における評価の改良を行うことに成功した。このような観点からの研究はまだ少なく、従来の方法では精密な評価と大きな改良が難しいこの種の問題、あるいは非線形波動方程式のキルヒホッフ方程式の研究に対するブレークスルーとなることが期待できる。上記の研究成果の一部は当該年度にいくつかの研究集会で報告済みであり、さらに現在論文としても執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
クライン・ゴルドン型方程式に関する研究(1)は、予定通り研究を遂行することができ、その結果を論文として公表に至ることができた。伝播速度が時間変数に依存する波動方程式に関する研究(2)については、本質的な問題となる高周波領域と低周波領域の双方の評価を計画通り行うことができた。具体的には、前者については従来の手法をそのまま適用可能であることが確認でき、後者については、当初計画していた(1)で用いた評価の手法を応用するアイディアの実現性に関しては若干の不確定要素もあったが、妥当と考えられるいくつかの条件のもとで適用することが可能となった。ただし、研究成果の公表についての取り組みは諸事情により若干予定より遅れており、次年度はそれを取り戻すべく早急に上記の結果を論文として取りまとめてゆく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は以下の観点で研究を進めてゆく。(A)現時点における(1)(2)に対する研究は、ある時刻において係数が特異性を持つ場合のエネルギーの漸近挙動だが、係数が特異性を持たない(時刻無限大で特異性を持つ)場合の漸近挙動について考察してゆく。この場合、時間周波数空間において「低周波領域」として扱われる領域が広がるため、評価の方法を多少変更する必要はあるが、既知の手法を応用することによって解決できると考えられる。(B)現時点の研究結果は、エネルギー評価が成り立つための係数や初期値に対する十分条件だが、これらの妥当性を主張するための具体例の構成が求められる。これまでの研究で培った具体的な反例の構成方法を応用することによって、今後は得られた結果とその条件の妥当性の証明を行ってゆく。(C)本研究の最終目的である非線形方程式の適切性の問題への応用について研究を進展させてゆく。
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Causes of Carryover |
2018年度に計画していた海外における研究集会が2019年度に変更になったため、差額は全額2019年度の当該学会への出張旅費として支出予定である。
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Research Products
(6 results)