2018 Fiscal Year Research-status Report
Study on representation for solutions to PDE by elliptic functions and the related problems
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18K03374
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
若狭 徹 九州工業大学, 大学院工学研究院, 准教授 (20454069)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 一般化Chafee-Infante問題 / スカラーフィールド方程式 / 不完全楕円積分 / フロント・パルス定常解 / 固有値の決定方程式 / 固有値の漸近公式 / 固有関数の漸近公式 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) 楕円関数による非線形偏微分方程式の分岐問題の解の記述 一般化されたChafee-Infante問題の大域的分岐構造の記述について,菅徹准教授(大阪府立大学)との共同研究に着手した。また、ワークショップ(九州工業大学数理講演会)を開催し、四ツ谷晶二教授(龍谷大学)、辻川亨教授(宮崎大学)などの参加者らとディスカッションを行い、変数係数の反応拡散方程式や非局所項を持つ反応拡散系における楕円関数の応用について情報を収集した。これらの経緯をもとに、今後の研究において楕円関数や不完全楕円積分に関するより詳細な情報が必要となることがわかった。解析のカギとなりうる既存公式を再調査し、これらの一部を微分方程式への応用に際して有用な表現に書き直すことに成功した。 また、一般化されたChafee-Infante問題については、汎用数式ソフトウェアによる数値計算によりサドルノード型の分岐が起きる可能性が示唆された。このことから空間1次元の問題であっても境界条件により非常に複雑な大域的分岐構造が現れることがわかった。 (2) 分岐解に付随する線形化固有値問題の固有値・固有関数の解析 一次元反応拡散系における多重フロント解や多重パルス解に付随する線形化固有値問題の固有値、固有関数について、栄伸一郎教授(北海道大学)らとの共同研究に着手した。栄氏の論文における力学系手法に基づき、安定性を規定する固有値および固有関数に対してある種普遍的な漸近公式が成立することが示された。 また、1次元スカラー場方程式に対する多重スパイク解の線形化固有値問題を考察した。方程式に含まれる指数が特別な場合に、一部の特別な固有値および固有関数の代数的表示式を得ることができた。さらに固有値を決定する特性方程式の楕円積分表示に取り組んだが、技術的な困難のため解決に至らなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題の遂行に際し、国内外の出張により十分な情報収集を行うことができたが、 論文執筆および投稿に関して当初見込んだスケジュールより遅れが生じている。 一般化されたChafee-Infante問題については、 分岐構造を決定づけるタイムマップ関数を楕円関数を用いて直接書き表すことができたが、これは本質的に不完全楕円積分に属するものとなるため、これまでの完全楕円積分に対する解析技法をより発展させる必要がある。 また、スカラー場の方程式の線形化固有値問題については、固有値の決定方程式の導出に成功したが、その完全楕円積分による表示について、代数的な要因による技術的困難が残っている。 これらの事情を踏まえ、楕円積分の解析技法の体系化に取り組んだが、これについてはある程度進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
遅れが生じてはいるが、当初の研究計画に従い、上記問題の研究テーマを継続し、進展状況を考慮した上でLam'eの微分方程式の解の漸近公式による分類問題に着手する。Lam'eの微分方程式は1次元スカラー場方程式の線形化固有値問題のある意味での一般化に相当するため、スカラー場方程式の計算結果を随時検討しながら理論構築を目指す。また、Lotka-Volterra競争系の線形化固有値問題についても検討を行う。
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