2021 Fiscal Year Research-status Report
Global analysis of the Kirchhoff equation
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18K03377
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
松山 登喜夫 中央大学, 理工学部, 教授 (70249712)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Kirchhoff方程式 / Gevrey空間 / 時間大域解 / 外部問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
Kirchhoff方程式の全空間における初期値問題の時間大域解に関する研究を行っている. Kirchhoff方程式は1886年にG. Kirchhoffが弦の非線形振動を記述する2階準線形双曲型偏微分方程式として発見したものである. しかしその時間大域解の存在問題の証明は非常に難しく, Bernsteinによる実解析解の存在証明以来80年を経た今でも実解析的クラスより広い関数空間で満足のいく結果が得られていない. 本研究では実解析関数を含むGevrey空間あるいはSobolev空間から初期値を取ったときの時間大域解の存在定理を得ることを目標としている. これまで解のライフスパンの性質を調べ, 背理法で証明を試みたものの, いかなるアイディアを駆使しても満足のいく結論が得られず苦慮していた. そこで今年度は原点に戻り, 対応する線形方程式のエネルギー評価式を見直すことから始めある程度の成果が得られた. すなわち, 係数が時間に依存する線形波動方程式のエネルギー評価式を見直し理に適った評価式を得ることができた. この評価式を用いて不動点定理の議論を駆使すれば, 小さな時間区間でのKirchhoff方程式のエネルギー評価式が得られる. 本研究ではこのような小区間での評価式で十分である. 最後に連続性の方法を用いれば解の延長が可能となり, 結果として目標とする時間大域解の存在を得ることが予想される. ただしこの連続性の議論も工夫を要する. 現在この結果を精査しており来年度中には論文としてまとめ上げ, 国際雑誌に投稿する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
解のライフパンの古典的な結果にこだわりすぎたため, Kirchhoff方程式の新たな知見を得ることができなかったことが原因の一つである, また, Gevery空間の深い知識を得るべく関数空間論の知識を獲得するのに時間を要したことももう一つの原因として考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度得られたアイディアでは, Gevrey空間から特殊な初期値をとった場合に時間大域解の存在定理が確立できそうだが, 今後このアイディアをより深化させSoblev空間に対する存在定理を確立することも視野に入れたい. そのために Gevery空間に熟知した関数空間論の専門家と議論しながら今年度得られた結果を拡張することを目標とする. もう一つの懸案の問題である外部領域における波動方程式の局所エネルギー減衰の問題も来年度中に完遂する予定である.
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Causes of Carryover |
コロナ禍により, 国内外の研究出張をすることができず, 研究費を使いきれなかったことが大きな要因である. 次年度は9月にオーストリアのウィーンで研究成果を発表し, 年を越して3月にピサ大学の V. Georgiev教授と波動方程式に関する研究打ち合わせを行うべくイタリアのピサに出張し, 研究費の大半を出張旅費として使用する予定である.
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