2020 Fiscal Year Research-status Report
Semiclassical Analysis of Schroedinger equations
Project/Area Number |
18K03384
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
藤家 雪朗 立命館大学, 理工学部, 教授 (00238536)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | シュレディンガー方程式 / スペクトルシフト関数 / 半古典解析 / 量子共鳴の不安定性 / 固有値のスプリッティング |
Outline of Annual Research Achievements |
主な研究内容としては、以下の3つがある。 (1)ボルドー大学のDimassi教授との共同研究において、有界なポテンシャルを持つシュレディンガー作用素のスペクトルシフト関数の半古典漸近挙動について研究を行った。従来、遠方で減衰するポテンシャルについての研究は多くなされてきたが、この研究では、単に有界であるという弱い仮定のもとに、 スペクトルシフト関数の超関数の(弱い)意味での漸近展開を高次の項まで計算や、さらにポテンシャルの遠方での複素平面への解析拡張と有界性を仮定して、強い意味での漸近展開についても成果を得た。これらの仮定を満たす典型的な例として、遠方で0次斉次なポテンシャルがあり、こうしたポテンシャルを持つシュレディンガー作用素の散乱問題は、新しい一つの問題として注目されつつある。この結果は現在投稿中である。 (2)現在トゥールーズ大学のAssal氏との共同研究で、2つの対称な単井戸型ポテンシャルを持つシュレディンガー作用素に相互作用を加えた行列値作用素の固有値の漸近分布を研究した。それぞれの単井戸が作る古典軌道が互いに横断的に交わるときのsplittingについては、前年度に既に結果を得ていたが、この度1点で接する場合についても結果を得た。ここれら2つの結果を一つの論文にまとめて投稿したが、つい先日学術雑誌掲載の連絡を受けた。 (3)ボルドー大学Bony、パリ11大学Ramond、パリ北大学Zerzeri教授との共同研究で、量子共鳴の不安定性に関する研究を行った。半古典パラメータhに関してo(h)のの摂動を作用素に加えて、量子共鳴の虚部がhのオーダーの変化を起こす例を構成した。この成果を記した論文は、アクセプトをもらったが、修正版を投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題であるシュレディンガー方程式の準古典解析において、3本の論文が完成し、それぞれ学術論文に投稿中、あるいは掲載が決定している。内容もスペクトルシフト関数、固有値、量子共鳴と行った様に、異なる角度から研究が進んでいる。また、研究室で指導している大学院生が大きく進んだことが、この1年の大きな収穫であった。私自身の業績ではないが、エネルギー交差が生成する量子共鳴の存在、量子ウォークの導入は本研究課題に新しい方向性を与える。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の概要(1)の延長として、0次斉次ポテンシャルが生成する量子共鳴の研究が考えられる。また、(2)と関連する問題として、エネルギー交差のない2つのポテンシャルを持つ行列値シュレディンガー作用素の量子共鳴の虚部の漸近挙動を研究したい。このギャップ条件のもとでの量子共鳴は、プランク定数に関して指数的に小さな漸近挙動を示すことが予想されるが、その漸近展開を求める。エネルギー交差は実の範囲にはないが、ポテンシャルに解析性を仮定すれば、複素平面上で交差する。したがって複素平面で前年度の手法を用いることにより、漸近挙動を求めることが可能であると期待している。
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Causes of Carryover |
covid19の影響で、予定していた研究集会参加や出張による共同研究などが中止となったため、次年度使用額が生じた。 これは、昨年度招聘予定であったクレタ大学のNikos Hatzizisis氏の招聘及び昨年度オンライン開催となった偏微分方程式研究集会を補う研究会の開催に充当するつもりである。
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