2022 Fiscal Year Research-status Report
Study of innovative speeding-up of main-variables elimination of multivariate polynomial systems
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18K03389
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
佐々木 建昭 筑波大学, 数理物質系(名誉教授), 名誉教授 (80087436)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 多変数多項式系の変数消去 / グレブナー基底法 / 多変数終結式法 / 多変数主項消去法 / イデアルの生成元係数 / イデアル最小元の早期計算 / 多項式系の三角化と四角化 / 終結式中の余計因子と除去 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,多変数多項式系の変数消去に関し,完璧だが計算が非常に重いグレブナー基底法に代る,実用的な算法を開発し有用性を示すことである。そのため,多変数多項式の再帰表現を用い,筆者が1992年に提案した『主項消去法』(二多項式系の主項同士を最小の乗数多項式で消去する)を採用した。算法は,具体的にはGCDとTES(Term Elimination Sequence)の計算の反復である。そして,前年度までに算法はほぼ完成の域に達した。 ●今年度(2022年度)は,第一に,算法そのものではなく,計算機内部での算法の実装方法を工夫した。TES計算に関しては,多項式の四則演算のみならず(再帰表現での)M簡約までも必要で,通常どおり実行したのでは随所で無駄な計算をすることになる。そこで,一つの指定された変数に関しては,その変数の指数部を指定された幅に収めて計算する多変数多項式算術を提案し,実装して有用性を確認した。 ●第二に,グレブナー基底算法では,主変数群が消去された終結式 R(u,v,..) が得られても,それと他の多項式たちとのS多項式を計算し続ける。すると,そのうちイデアルの最小元が計算される。同じことを二多項式系に対して主項消去を用いて行ったところ,予想だにしなかった見事な形で余計因子除去ができた。これは素晴らしい成果だと思う。 ●本研究で提案した変数消去法は種々の定理から成っている。それらの証明のミスを修正したり証明自体を抜本的に簡明化したりしながら,本研究全般に関する総合報告の形でまとめて,計算機代数に関するアメリカの専門誌(ACM Communications in Computer Algebra)に投稿した。昨年度末に論文受理の連絡を受けたが,その原稿自体の幾つかのミスを修正し,最新の成果もかなり書き込んだので,再審査に入っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1) まず,コロナのため研究期間が延長されたので,その効果が大きい。 2) グレブナー基底算法は現代の計算機数学において最重要な算法の一つであり,これまで世界中の計算代数の研究者が高速化に取り組んで,多くの改善策が提案されたが,抜本的な改良はできなかったと言ってよい。算法が簡単すぎて,手の付け所がないのである。 3) 一方,十七世紀からある終結式法は,解りやすい方法だが,終結式が余計な因子を含む場合が大部分である。余計因子の存在は二十世紀の初頭に研究者は気付いていたが,なす術がなかった。この状況はグレブナー基底法(この方法は余計因子を全く生成しない)が現れても変わらなかった。筆者の方法は,未だ完全とは言い難いが,グレブナー基底法の基礎演算であるS多項式を全く生成しないで余計因子除去に成功したのだから,物凄い研究成果であると自負している。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナで研究期間が再再々度延長されたので,次年度は下記二つの課題に取り組む。 ●研究実績欄に述べた第二の成果である『余計因子除去法』は,簡単明快でありながら世界の誰もが全く予想だにしなかった成果である。しかしながら,現在のところ対象が二多項式系に限定されている。それを多・多項式系に拡張することを試みる。 ●それと並行して,次の研究テーマのための準備研究を行う予定である。
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Causes of Carryover |
百万円近くもの額の研究費が繰り越されたのは,本研究者の科研費の多くは国際会議での発表のための海外出張経費が多くを占める中で,2020年度に外国出張を二度するべく,前年度から研究費をプールしていたためである。それが昨年度も一昨年度もオンライン会議となってしまい,海外出張としては研究費を全く使用できなかった。 今年度は,一つは7月にポーランドでの会議に参加が決まっている。もうひとつは,これから研究に頑張るとしか言いようがない。
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