2018 Fiscal Year Research-status Report
Rigorous analysis for high-dimensional critical behavior and crossover phenomena in mathematical models
Project/Area Number |
18K03406
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
坂井 哲 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (50506996)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 自己回避歩行 / パーコレーション / イジング模型 / 臨界2点関数 / レース展開 / 上部臨界次元 / クロスオーバー現象 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で設定した三つの課題のうちの一つ「2体相互作用係数が2体間距離の冪で減衰する長距離モデルに対し,その分散が対数発散する境界冪で臨界2点関数の漸近挙動を解明すること」を上部臨界次元以上(等号込み)で解決し,物理で予想されていた現象(の一部)が正しいことを証明した.具体的には,例えばパーコレーションの場合,相転移が起きる臨界点直上で,原点oと点xが同じ開クラスターに属する確率が漸近的に|x|^{2-d}/log|x|(の定数倍)のように振る舞うことを,パーコレーションの上部臨界次元6以上の全ての次元で証明した.
証明に使われた「レース展開」では従来,臨界2点関数の冪的な振る舞いを導出する解析手法が確立されていたが,上述のような対数補正項を露わに導出することはできなかった.本課題を解決できた一番のポイントは,そのような対数補正項込みの冪関数を畳み込む評価手法を確立したことである.さらに,|x|^{2-d}/log|x|の三重畳み込み(自己回避歩行やイジング模型では二重畳み込み)が6次元以上(二重畳み込みの場合は4次元以上)でも収束することに気づいたことは大きなポイントで,そのおかげで上部臨界次元直上における平均場臨界現象を証明できたのである.このことは専門家の間でも驚きをもって迎えられ,トップジャーナルであるCommunications in Mathematical Physicsに受理された.
尚,この対数補正項の入った漸近挙動は,平均場模型であるランダムウォークに対しても知られていなかった事実であり,この点も専門家の間で高く評価された理由の一つである.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で設定していた課題の一つは,上述の「研究実績の概要」で説明した通り,完全に解決された.残る課題は,以下の二つである: (1)d次元体心立方格子上のパーコレーションがd≧7 で平均場臨界現象を示すことを証明し,「最近接パーコレーションの上部臨界次元が6である」という予想を解決すること. (2)並進対称性の成り立たない「ランダム・コンダクター中の自己回避歩行」を解析する手法を確立し,「十分高次元では均質な媒質中の自己回避歩行と同じ臨界現象を示す」という予想を解決すること. (1)に関して,自己回避歩行に対して6次元以上,パーコレーションに対して9次元以上でレース展開が収束し,臨界現象が平均場的なものに退化することが証明できている.現在,その論文の再投稿を準備中である.また,7次元や8次元でもパーコレーションのレース展開が収束することを示すために詳しく調べなければならない項目が四つに絞られたところまで来ている. (2)に関して,共同研究者のHelmuth博士(University of Bristol)を訪れ,レース展開を用いて主張を証明するための十分条件を求めた.この条件が成り立ち,しかも2体相互作用係数の2次モーメントが発散するような冪関数の場合,次元d>4で均質な媒質中の自己回避歩行と同じ平均場臨界現象を示すことが確認されている.
|
Strategy for Future Research Activity |
上述の「現在までの進捗状況」で説明した二つの課題について,以下のような方策で臨むつもりである: (1)7次元や8次元でもパーコレーションのレース展開が収束することを示すために,(i)0次と1次のレース展開係数のフーリエ変換に対する赤外評価を改善する,(ii)それらを上から押さえるパラメターの評価を改善する,(iii)これまで捨てていた偶数次のレース展開係数からの寄与を評価する,(iv)2点関数のフーリエ変換の紫外評価を赤外評価と分離して行なう.地理的に離れている共同研究者間でこれら四つの項目を分担し,相互訪問で全体像を把握し,問題の最終解決を図る. (2)上述の十分条件とは,ランダム・コンダクター中の自己回避歩行の臨界2点関数に対する一様評価(或いはそれに準ずるもの)である.一方,ランダム・コンダクター中のランダムウォークのグリーン関数に対しては,そのような一様評価は知られていない.知られているのは,ランダムウォークの出発点に依存したランダムな半径の球の外側で一様評価が成り立つというものである.したがって,まずはこのランダムな半径のモーメントを評価し,その属性が自己回避歩行の場合でも成り立つのか調べる必要がある.共同研究者と相互訪問をして意見交換・集約を図るつもりである.
|
Research Products
(10 results)