2021 Fiscal Year Research-status Report
Rigorous analysis for high-dimensional critical behavior and crossover phenomena in mathematical models
Project/Area Number |
18K03406
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
坂井 哲 北海道大学, 理学研究院, 教授 (50506996)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 自己回避歩行 / パーコレーション / イジング模型 / 臨界2点関数 / レース展開 / 上部臨界次元 / クロスオーバー現象 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,強磁性イジング模型や自己回避歩行,パーコレーションなどの数理モデルの 相転移・臨界現象に関する次の3つの未解決問題を研究する.(1)d次元体心立方格子上のパーコレーションがd≧7で平均場臨界現象を示すことを証明し,最近接パーコレーションの上部臨界次元が6であるという予想を解決すること.(2)2体相互作用係数が2体間距離の冪で減衰する長距離モデルに対し,特にその分散が対数発散する境界冪の場合,上部臨界次元以上(等号込)で臨界2点関数の漸近挙動を解明すること.(3)並進対称性の成り立たない「ランダムな媒質中の自己回避歩行」を解析する手法を確立し,十分高次元では均質な媒質中の自己回避歩行と同じ臨界現象を示すという予想を解決すること. (1)d≧9で平均場臨界現象への退化を証明し,論文はTaiwanese Journal of Mathematics(2020年)に掲載された.これは,標準的なd次元正方格子上における上部臨界次元の評価d≧11(Fitznerとvan der Hofstadによる2017年の結果)を凌駕している. (2)対数発散のないα≠2の結果はAnnals of Probability(2015年)に掲載されていたが,この度,最も難しいα=2の場合も解決し,Communications in Mathematical Physics(2019年)と 数理解析研究所講究録別冊(2020年)に論文が掲載された. (3)コロナ下でお互い密に情報交換できる場が設けられず,思うような進展は見られていない.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題(1)については,現段階で到達しうる最高の結果(d≧9で平均場臨界現象への退化)を論文に纏め,Taiwanese Journal of Mathematics(2020年)で発表.さらに低次元まで拡張するために必要な情報についても知見を得ることができたので,これを発展していく予定.余談として,坂井研の博士課程の学生(現在は台湾NCTSポスドク)が同手法を有向パーコレーションに適用し,時空間次元10以上で平均場臨界現象に退化することを証明し,学位を取得したことを記しておく.(70%完了) 課題(2)については,当初の目標(臨界冪α=2長距離モデルの臨界次元以上(等号込)での臨界現象を解明すること)を完全に解決し,論文をCommunications in Mathematical Physics(2019年)と 数理解析研究所講究録別冊(2020年)で発表した.(100%完了) 課題(3)の課題については,これまでコロナ下でお互い密に情報交換できる場が設けられなかった.海外との行き来が復活する兆しが見えてきたので,研究活動を再開させる予定.(30%完了)
|
Strategy for Future Research Activity |
課題(1)については,上部臨界次元まで降りてこられない原因が低次のレース展開係数のせいであることが判明している.そこで,この低次の展開係数を精密に評価することが必要になってくるのだが,従来のやり方では難しいため,微分不等式の証明でよく使われる「紫外正則化」のアイデアと組み合わせることで,レース展開の収束性を改善しようと計画している. 課題(3)については,ランダムな媒質中の自己回避歩行に対するレース展開の可能性を探るのと同時に,もう少し簡単なランダム系の臨界現象を考察しようと計画している.具体的には,1次元コンタクトプロセス(伝染病伝搬を記述する単純な確率モデル)を定常なランダム環境下で定義したものや,2次元正方格子の各単位面にどちらか一方の対角線をランダムに引いた格子上のサイトパーコレーションにおいて,とくにハイパースケーリングがどのように影響を受けるのか,台湾の研究者たちと共同研究する予定.
|
Causes of Carryover |
大きな研究集会を企画していたが,コロナ下で延期したため.また,自分が出かけられるような出張の機会が,国内国外ともに無くなってしまったため.
|
Research Products
(6 results)