2019 Fiscal Year Research-status Report
Dynamical Risk Sensitive Value Measure and its Application to Valuation of Project
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18K03421
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
三澤 哲也 名古屋市立大学, 大学院経済学研究科, 教授 (10190620)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮原 孝夫 名古屋市立大学, 大学院経済学研究科, 名誉教授 (20106256)
宮内 肇 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 准教授 (20181977)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 確率力学系 / リスク鋭感的価値尺度 / 内部リスク回避度 / プロジェクト事業投資 / 事業ポートフォリオ / 電力系統 / 供給信頼度指標 / 再生可能エネルギー |
Outline of Annual Research Achievements |
不確実性を考慮したプロジェクト事業の投資価値評価の研究は、数理ファイナンスはもちろん実務上も関心が持たれている。こうした背景から、研究代表者と分担者らは不確実性を考慮した事業を確率システムとして捉え、その上で定義される「リスク鋭感的価値尺度(以下RSVM)」について、1)RSVMの数理的解析とその応用、2)従来の評価法との比較によるRSVM評価法のアドバンテージの明確化、3)RSVMの適用対象の拡張、に焦点を当てた研究に取り組んでいる。今年度は、代表者と分担者間の共同研究を中心に、実務的側面に重点を置いた研究を行った。その成果は以下の通りであり、一部はすでに論文や学会発表を通じて公表している。 代表者・三澤哲也は分担者・宮原孝夫らとともに、RSVMやそれから定まる内部リスク回避度(以下IRRA)による東証一部上場企業の個別銘柄の投資パフォーマンス評価を行い、標準的な評価指標であるシャープレシオとの比較を通じて、RSVMの損失鋭感性やIRRAによる価値の順位づけが有効に働くことを確認した。 なお、宮原孝夫は上記共同研究とともに、ファイナンス分野で知られるAumann-Serrano指標とRSVMとの関係、IRRAの数理的性質の解明と有効な活用法の提案も行った。 分担者の宮内肇は三澤哲也との共同研究として、RSVMによる電力系統の供給信頼度指標の定式化を試みた。近年大量に導入が進む再生可能エネルギー電源を多く含む電力系統では、供給不足量の確率分布が従来の正規性に近いものと異なり、いびつな形状を示す傾向にある。これを考慮して、期待値で評価する従来の供給信頼度指標ではなく、確率分布全体の情報を反映するRSVMによる供給信頼度指標を提案し、シミュレーションを通じて提案指標が優れていることを示した。また再生エネルギー投資に関わるRSVM評価についても検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者、分担者が単独ないしは共同で、学会や研究会報告、論文作成を通じて成果の公表を行うと共に、相互間の研究打ち合わせを通じて、成果の深化や今後の方向性を明確化できた。その中で生まれた以下の事柄については、特に今後につながる特筆すべき成果と考えている。 1)RSVMやIRRAの数理的特性の解明。価値評価対象の符号条件の制約をなくしたうえで、RSVM中のリスク回避度に対する単調減少性が一般的に示された。そのことによりRSVMから定式化される内部リスク回避度の実用上の解釈がより明確になった。2)RSVMの有用性の検証。東証株式市場の個別銘柄への投資パフォーマンス評価への応用や、現実のデータに基づく電力設備ポートフォリオ価値評価の分析といった、具体的投資案件に対する成果を、従来からの関連指標との比較の中で示せた。3)RSVMのリスク指標としての拡大利用。ファイナンス的な投資案件への不確実性リスク価値評価だけでなく、電力供給信頼度のような「システムの信頼性評価」の問題にもRSVMの適用可能であることが判明した。そのことで「RSVMの安全性リスク研究」への拡張定式化についても視野に入りつつある。 1)、2)は実務における本研究の価値を高めることにつながるものであり、3)については当初の研究開始時には予想されていなかった展開である。いずれも今後のRSVMに基づくリスク研究について、さらなる発展が期待される興味深い成果である。以上を踏まえて、本研究課題の研究は順調に進捗していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで同様、研究代表者、分担者は単独あるいは共同で研究会や学会での報告、論文作成を実施するとともに、計画最終年度であることから、適切な時期に代表者、分担 者相互間、他の研究者を含めた、全体的な研究打ち合わせ、研究集会を実施する予定である。またこれまでの成果の公開の促進、特に論文化による公表に重点を置く。具体的な研究課題としては以下のことに取り組む予定である。 研究代表者・三澤哲也は、動学的リスク鋭感的価値尺度に基づく事業ポートフォリオの最適戦略について、これまで得られた離散的時間モデルの結果をさらに深化させた上で適切な学術論文誌への投稿を目指す。関連してRSVM概念の拡張や数理的な性質の一層の解明について分担者・宮原孝夫らとともに推進する。同じく分担者である宮内肇らと共に、リスク鋭感的価値尺度の応用展開の一環として、多様な電源を考慮した発電事業ポートフォリオ価値評価や電力システムの安全性リスク評価分析を深化させる。 分担者・宮原孝夫は、「リスク鋭感的価値尺度法」とそれに基づいた「内部リスク回避度」による価値評価法の適用分野を広げ、この価値評価法の有用性を検証する。 分担者・宮内肇は、従来の電力供給信頼度指標と対比させることで、RSVMを用いた電力系統の供給信頼度評価において重要となる「リスク回避度」の推定問題に取り組む。また、RSVMから派生する内部リスク回避度の信頼度分析への応用や、過去の研究においてRSVMから近似的に導かれていた「投資意思決定統計モデル」を利用した供給信頼度評価についても検討していく予定である。
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Causes of Carryover |
分担者・宮原孝夫が当初予定していた令和2年1~3月のいくつかの学会・研究会出張について、コロナ感染の影響で中止せざるを得なくなったため。持ち越した使用予定額は次年度の関係学会・研究会への出張費として使用する予定である。
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