2019 Fiscal Year Research-status Report
Network Theory from Endo-perspective
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18K03423
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Research Institution | Tokyo Woman's Christian University |
Principal Investigator |
春名 太一 東京女子大学, 現代教養学部, 准教授 (20518659)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ネットワーク / 圏論 / 記憶容量 / カオスの縁 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、システム内在的な異なるレベル間の関係の在り方の数理的研究を行うことで、複雑系の作動原理の理解を深めるという目的のもと、(a)ネットワーク上のダイナミクスと情報流、および(b)圏論的ネットワーク理論の内在的展開、という二つの課題を設定していた。
(a)前年度までの研究では、外部からの入力もしくは雑音のないネットワークのダイナミクスとその情報流を対象としていた。今年度は、その成果を入力のあるネットワークのダイナミクスに拡張するための予備的研究を行った。入力のあるネットワークの情報処理能力の指標として記憶容量と呼ばれる量が知られており、ESNと呼ばれるモデルにおいて、入力が弱い場合に記憶容量を平均場近似で計算する理論を構築した。相互情報量など関連する指標も定性的には記憶容量と同様に振る舞うことが分かった。特に、これらの量が最大化されるのは、カオスの縁ではなく、カオスの縁の手前のパラメータ領域であることを示した(学会発表1、雑誌論文1)。
(b)前年度に、ネットワークの頂点の次数が持つ、辺形成の結果でありかつ原因である、という二重性を圏論的双対性として定式化して、これに基づいて提案した成長するネットワークのモデルでは、実世界においてしばしば観察されるが、成長するネットワークのモデルでは生成するのが難しいと先行研究において指摘されてきた密なスケールフリーネットワークを生成できていた。しかし、生成されたネットワークの高次構造は実世界のネットワークではほとんど観察されないものとなっており、モデルの修正が必要であった。今年度においては、元のモデルの圏論的双対構造を保存しながらモデルを変形し、密なスケールフリーネットワークが生成でき、かつより現実的な高次構造を持つネットワークを生成できるモデルを作ることに成功した(学会発表2,3)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、前年度の報告書において、当初の計画からすれば派生的だが優先的に解決することが重要、と位置付けた課題に取り組んだ結果となった。しかし、(a), (b)いずれの課題においても前年度と同様に「内在的展開」の深化に重要と考えられる多くの成果を得ることができている
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Strategy for Future Research Activity |
(a)は、入力のあるネットワークのダイナミクスと情報流の研究について、今年度の成果を基盤として前年度までの成果を一般化することを目標に進めていく。
(b)については、提案したモデルの持つ構造を一般化して「ランダムKan拡張」という概念を見出しており(学会発表4,5)、より広くべき乗則を生成するメカニズムの背後にある普遍的構造の研究を行うことを検討している。今後は「ランダムKan拡張」について、様々な適用例を検討しながらその普遍性について検討する。また、前年度までの成果もKan拡張の枠組みでとらえることができるが、両者の関係性についても調べる。
また、両者の課題に取り組む過程で「内在的展開」に有効と考えられる派生的な課題を発見し優先的に解決することが重要であると考えられる場合には、このような派生的課題にも取り組む。
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Causes of Carryover |
雑誌論文1はAPCが発生する学術誌に投稿したが掲載に至らず、結果的にAPCが必要ない雑誌に掲載されたため、当初確保しておいた分の残額が発生した。これが、次年度使用が生じた理由である。使用計画としては、現在投稿を準備している新たな論文のためのAPCとして使用する。
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Research Products
(6 results)